真昼の淡い微熱

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オウムからの帰還/高橋英利

村井の死について、他の資料で散々目にしていたけれども、どれも事実として記してあるだけで淡々としてた。
しかし村井は著者の慕う上司であった。
著者がオウムを疑い始めて混乱していたときに殺害されて、記憶に残らないほど叫びあげたこと、静かに一人で孤独に悼むしかなかったこと。
涙出た。

そして死を知らせてそれを撮ろうとするマスコミな……。
そりゃ格好の絵になるでしょうよ。まあ、オウムについてまともに知ろうとしたきっかけが『A』だったのと宗教嫌悪に嫌気がさしてたのとで、ちょっと私はオウム寄りな心持ちだった。
が、本書のイニシエーションの詳細は、なんとも惨たらしいものだった。麻薬怖い……。
いや、麻薬による神秘体験も、あるのだろうとは思いますよ。それを怖がるのは現世的価値観なのかもしれない、とも。

しかし薬も死も上手く扱えないうちに、それをやってしまえるのは、怖いよね。



やはり終末思想というのは、私には実感としてはよくわからない。
「本当の自分」というのをむしろバカにして育ってきた。バカにしていたということは、私の物心つく前までは蔓延していた思考だったということだろう。
オウムの「魅力」もおぼろげながらわかってきた。
私とて宗教や神秘に関心のある身、当時の価値観に晒されていたら入信してたかもしれない。
同じように関心あったはずの父や昭乃さんは何が違ったのだろう。