真昼の淡い微熱

感想ブログ

政経学・社会学・哲学他

嗤う日本の「ナショナリズム」/北田暁大

アイロニカルな態度がベタに転換する流れ建前=自らを「標準」と信じて疑っていない(「戦後民主主義」「左翼」 「マスコミ」) 実態=建前の存在を知っている(対抗馬としての「ナショナリズム」「保守」)アイロニー者は「建前に隠された本音を語る」自己…

加害者と被害者の"トラウマ" PTSD理論は正しいか/笠原敏雄

まずPTSDをごく狭い範囲で扱っているのではないかという点、PTSD理論(トラウマになる出来事が起きたら必ず異常症状が起こる)が万人に適用されるなんてPTSD論者も言っていないのではないかという点、直近で何かが発生したときに後づけ的に原因を求めている…

戦争と性暴力の比較史へ向けて

要約ではなく印象に残ったとこのメモ。エイジェンシー:構造を免責しない主体性。すべては構造化され普遍的なパターンに当てはめられる構造主義のあとに差異、主体に注目したポスト構造主義の用語。本人の主体はある。だが主体は構造のもとにしか現れない。…

『福祉政治史 格差に抗するデモクラシー』/田中拓道 『社会変動の中の福祉国家』/富永健一

ブレトンウッズ体制ドル本位制下である程度自由な経済政策と貿易が行えるようになった国際秩序体制。自由貿易を支えた金本位制では各国景気による自由な経済政策が打てない。金本位制が行き詰まった世界恐慌後の保護貿易はそこからはずれた国を経済苦境に陥…

新・日本の階級社会

2018年1月発売の新書。主に2015年の調査結果を分析している。現代日本の5つの階級1.資本家階級2.新中間階級3.正規労働者階級4.アンダークラス5.旧中間階級資本主義社会では生産手段が少数に集中して所有され、あとの多数は自分で生産手段を所有しない。資本…

男の絆-明治の学生からボーイズ・ラブまで-/前川直哉

意外とジェンダー論初学者に向けて書かれてた。セジウィックの論が難解だったからかな……。修論下敷きというのもあるだろうけど。そうそうー!「昔の日本は同性愛に寛容だった」論イラッとするんだよ。ホモソ下位への搾取と対等な人間関係の区別がつかないの…

男子の貞操/坂爪真吾

「性でつながる社会」に抗して――坂爪真吾『男子の貞操』批判このブログの書評(批判寄り)を読んでから読み始めた。僕たちが生きている社会は、男性が性にまつわる問題の当事者にならなくても済む社会、より正確に言えば、本当は当事者であったとしても、そ…

男同士の絆/イヴ・K・セジウィック

むずかしい……なにがむずかしいって、噛み砕くと「~~なのではないかと考える。この場合こういう反論が考えうるけどそういうことじゃなくてもっとこうこのへんの話が私はしたいからあそこらへんに取っ掛かりがあるんだろうなーとおぼろげながら思ってる」っ…

輪廻と解脱/花山勝友

これです、私が知りたかったことがほとんど書かれている。まず私の立場として、前世もの作品を読み漁るブームが到来して(物語を類型としか見れなくなったので一旦休止中)なんか前世設定ってあまりにも輪廻転生を簡略に扱いすぎてない?宗教的にはもっと違…

輪廻転生を考える/渡辺恒夫

うーん。遍在転生説、合理的すぎて、というか合理性のみを求めすぎていて、合わない。世界に対してそこまでの理屈を要求しますか、という。わかるよ、死んだら来世は未来ではなく過去や現在に転生する可能性なんかは、わかるよ。でも息づいている一切の人間…

資本主義から市民主義へ/岩井克人/三浦雅士

あっ好きだ。何気なく手に取った本だけど思想が自分に合いすぎ。いい出会いをした。「モノでありヒトである」二面性を受け入れるところとか、IT革命は技術が物事を決定したのではなく世界が革命を必要としただとか、「自分の意思で動くときそれは自分を使役…

政治の修羅場/鈴木宗男

ボトムアップだねえ。「先生」の考えを先回りして読み取ることが優秀な秘書となるわけか。とある仕草をしたら煙草がほしいということ、そしてそれに従わねばならない、みたいなのって面倒くさいよ……。でもそれが日本的なのだろうか。「総裁選の賄賂を受け取…

イスラム国の正体/黒井文太郎

体系的でわかりやすい説明書。日本でやっとISISに関心が向けられてきた2014年12月刊行。なのでとっつきやすい。シリアでアラブの春が失敗し、アサド政権下でシーア派が幅をきかせた。そこで大量虐殺が行われたので、スンニ派(とか?)が立ち上がり内線が始ま…

イスラム国 テロリストが国家をつくる時/ロレッタ・ナポリオーニ

世界情勢全くわかってないよ……。辛うじてアラブの春あたりはわかるけど事件とかを「既知のもの」として扱われると困る。勉強しよう……。日本でオウムと関連づける言説よく見かけたけど、それはいかんだろう、と。これは読む前からわかっていたが、読んで更に…

未解決事件 オウム真理教秘録/NHKスペシャル取材班

堅実な良書。何より「マインドコントロール」の言葉を疑い「その前に信者の責任放棄があった」と言ってくれたのが良かった。「操られる」前に自ら「操られる」ことを望んだ人たちの集まりがオウムであったのだと私も思ってるから。「責任分散の構造」も、改…

オウム法廷連続傍聴記/佐木隆三

数多ある事件のひとつひとつの詳細を全然知らなかったな。そんなこともやってたのか、みたいな。そして私教団が具体的にどんな事件起こしたかにはあまり興味ないんだな……。傾向は知ってるし、と思ってしまい読むの苦痛だった。心理的背景やその移り変わり、…

黄泉の犬/藤原新也

最初に「えらそう」という感想を抱いてしまって、しかも麻原を端から馬鹿にしてるような印象を得てしまったため、その後が素直に読めなくなってる……。この本の最大の意義は「麻原は水俣病だったのでは」という提言にあり、それ自体は後年の資料で知っていた…

私にとってオウムとは何だったのか/早川紀代秀/川村邦光

本屋で麻原に惹かれた人って多いのかな?今だったらネットか、とは、一概には言えないと思うけど。(あーでもイスラム国はめっちゃネット活用してるか)まああれだよね……「貢いだから好き」みたいなもんだよね……。あと「もう後戻りできない」と思わせる構造も…

A3/森達也

森さんの感傷的な文章、好きです。「杜撰すぎる精神鑑定」の内実がわかって良かった。「入浴は拒否する姿勢を見せないのに裁判関連には選択的無関心」のレトリック、私も騙されました……。あー。酷すぎるね。一緒なのに、作為的に訴訟能力はあると判断。「も…

麻原裁判の法廷から/渡辺脩

なんだこれ、ここに書いてあること全部信じるならめちゃくちゃすぎないか、唖然。サリンの点検が事件の二ヶ月後とか、杜撰すぎる。「裁判の引き延ばし」と批判されてたらしいけど、普通に考えて、弁護士が裁判を引き延ばすのにどんなメリットがあるというん…

オウムからの帰還/高橋英利

村井の死について、他の資料で散々目にしていたけれども、どれも事実として記してあるだけで淡々としてた。しかし村井は著者の慕う上司であった。著者がオウムを疑い始めて混乱していたときに殺害されて、記憶に残らないほど叫びあげたこと、静かに一人で孤…

オウム事件17年目の告白/上祐史浩

私はメディアに出てくる彼を知らないからあまりその視点はわからなかったけど、当時を知る人の反応によるとまだ彼の考えが変わったことって知られていないんだな。面白いのは「ひかりの輪」のHPで。「何かを絶対と崇めなくていい」「信じるかはよくよく考え…

麻原彰晃の誕生/高山文彦

はー。麻原の過去が。拒絶の人生だったんだな。しかし懐への滑り込みかたは心得てると。宗教法人の許可の後ろ楯としてチベットで誰に何をもらえばよいかとか。最初は弟子のシャクティーパットにも心血注いでたとか。そりゃ、感動するよな。自分のために身を…

革命か戦争か/野田成人

ふむふむ。資本主義の綻びを指摘。『精神史』の記述によれば、「教皇のかんざしてた利権の冠を社会が自らにかぶせるようになり、際限なき暴力装置と化した」と呼ばれるところかな。事実「拝金主義はキリスト教的」とも言われたりしますしね。金の永遠性を信…

オウム真理教の精神史/大田俊寛

あー。これ、最初に読むべきものだな。体系づいてて、時代のうねりの中でオウムが生まれた経緯がわかりやすい。一冊の本としても優秀なんだと思う。まさか近代国家の設立まで遡るとは。「近代国家は公的に死を上手く扱えない」。まさに。『オウムからの帰還…

慟哭/佐木隆三

うーん……ほんとに強制捜査の目を眩ますためだったか……マハームドラー、意志を捨てグルと一体化しなければならない、これがやばいんだな。うん。タントラヴァジラヤーナと合わさってしまったことで。麻原の精神性も幼稚さもわかった。圧倒的ルサンチマンから…