真昼の淡い微熱

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黄泉の犬/藤原新也

最初に「えらそう」という感想を抱いてしまって、しかも麻原を端から馬鹿にしてるような印象を得てしまったため、その後が素直に読めなくなってる……。

この本の最大の意義は「麻原は水俣病だったのでは」という提言にあり、それ自体は後年の資料で知っていたのだけれども、まさにタイトルの『黄泉の犬』の章でドキリとした。

それはまんま去年自分の書いた話と真逆の世界であったからだ。(正確に言うなら、私が『ソレイユのこどもたち』から受けたイメージと。)
人間の屍肉を喰う3匹の犬。
新鮮な著者の「肉」を喰らおうと鋭く睨みつけ距離を縮める捕食者。
まだ捕らえてもいないうちからどちらが喰うか喧嘩。
私の知らない世界だ。
でも著者の言う「人間はそんな価値のあるものではないと溜飲下がった」思いは、私の結末と同じであった。

あれ、メタファーとかないので単純なんだけど、「勝手に同族と投影しかつ見下してた人に自分より価値があったと思い知る(そういう基準でしか人を計れない)」って話で。ちょっと沿わないように見えるけど、何で私はそれを死に仮託したんだろうって思ったら、生を受けた人間の価値なんてないよってことが言いたかったのかもと。
まあ私描写力ない(テーマを伝えられないとかでなくて受け手の中に物語世界を構築する力が今ないの、まあまず受け手がいないのだが)から読み返したくないんだけど!

「夢みたい」「現実感が薄い」と言うように、目の前を幻像と捉える感覚ってみんな持ってるんじゃ。それは悟りとは言わないのか。まだ違うのか。