真昼の淡い微熱

感想ブログ

サード/坂井恵理

おおー。
異性愛至上主義を同性愛至上主義にひっくり返す試みの複雑版ですね。
主にモノ⇔ポリーについて。
そうそうこれもフツウを揺るがす問題提起だわ。だからフツウ価値観に悩んでる人か疑いを持たなかった人に読んでほしいタイプの作品。
どっかで聞いたなこの台詞ー!っていう、現実のパロディ化と置き換えの面白さ。
「2人結婚では稼ぎ手が一人になってしまう」「3人でも離婚や死別はありますし」とかね!
フツウってそんなもんなんですよね痛快!

最初仄かに自分のサードジェンダー自認についての共感を求めてたけどまあそういうことじゃなかったし、サード自認なんていってもそりゃ多様なんだろうからぴったり描かれるわけもないな。
でも性別診断してからサードはサードで固まるようになったとか……うわあ超ありそうリアル。

マティの描写と最後は確かに尺不足を思わせるが、これだけの設定をよく1冊にまとめ切れたなあと感心。個人的にはこれでちょうどよい。
けど、こういう世界の見方に慣れていない人にとっては設定を把握するだけに終わってないかしらって不安はある。まあ読者舐め過ぎと言われたら安心するやつ。
でも性自認性的指向の話は読んでみたかったかもなあこれで。
てか展開の都合とはいえポリガミーがフツウであるというだけでむしろこの世界でモノアモリーはマジョリティーなのではないか、とも読み取れるわね。
その価値観を打破できなかったというわけではないんだろうけど結果的にこのモノ社会において「理解しやすい」ものになってるな。
うーん考えていくとやっぱせめてもう1巻はほしいかも。手紙書こうかなー。

あと男装少女論読んだから思ったことだけど、漫画絵において「男性性」「女性性」を表す記号が確立されてる。 そこでは中性性を作り出すことは可能だけれど、無性性や両性性は作り出しづらいのではないか。
だから漫画では中性以外のXジェンダーを描くのが凄く難しそう。悲しいかな結局二次元ですら見た目の性から逃れることは困難だ。
それゆえにここでもサードは女性の分化型となり、出産を担うことになったんじゃないかと推測する。