真昼の淡い微熱

感想ブログ

幕が上がる/監督:本広克行/脚本:喜安浩平

うーーーーん……。
とりあえず手放しに感動した!って言える映画じゃねーな。
原作と結構違うっていうからわくわくしてたのに、確かにちょいちょい変えてはあるけど根本的な軸が変わってないから単なるダイジェストじゃねーか感が。
演劇シーン全部ダイジェストだったのも効いてるんだろうな。
あの銀河鉄道の夜が……。

色々頑張って、酸いも甘いも噛み締めて、溜めて溜めて、そしてそれからやりきりおったー!って気持ちよさがない。
だから、さおりの「私たちは舞台の上でならどこまでも行ける」、全然響いてこなかった。
これ、私がこういう「青春」を体感してないから思うのかなあ。でもそういう人にも響かせてくれるのが万人向けの映画だよなあ。


いやモノノフとしては「凄いなあ、俳優ももクロ」と思うよ。
実際ほんっと夏菜子、え、めちゃくちゃ上手かった!
上記のシーンだってあんなの、普通に出てこないわよ。
こんな顔知らなかった。
度肝抜かれた。あれは高橋さおりだった。
「い、いえ」が自然に聞こえるの凄いよ。

中西さんとの絡みも良かった。
フードコートで「行こうよ全国」って言う流れ、あそこ、一番好き。
例のホームで、「高橋さん」と言った中西さんに涙が出た。それだけの想いが込もっていたし私に届いた。
私が杏果推しだからじゃなくて、中西さんとして涙が出たことに、一周回って杏果推しとして誇りたい。
その意味で、俳優としてのかれらの姿に、モノノフなら間違いなく満足できる。
ももクロネタもほんとさりげないから安心してニヤニヤできる。
平田さんと本広監督がファンに「俺らのアイドルに何やらせるんだ」って言われると思ってたって話、ちょっと面白い。ファンの心情と真逆すぎて。


部分的には良いところ沢山あったし、きらめきもざわめきも美しいなと思う。
5人で夜空を見上げてカメラが引いていき、「宇宙から見ればみんなひとつ」という、その5人の絆。
一人だけれど孤独じゃない、銀河鉄道
神様が降りて、消えて、(動揺を経ずに)近づく。
中西さんを見つめていたさおりが、演劇に魅せられて逆に見つめられていく流れ。



しかしうーん、主人公を5人にするか、1人にするか、どっちかにすべきだったと思う。
群像劇というほどでもないし、かといってさおりだけの物語ではないし、どっちつかずでとっちらかってる印象。
もう5人一緒に出演する作品はしばらくなくてもいいと思う。足枷になるくらいなら。


私は『5つ数えれば君の夢』が大好きすぎるけど、まあジャンルが全然違うから比べる必要なくて良かったと思ってた。
けどこれで、5人主人公の物語を作り上げる山戸監督の上手さは実感したなー。あと、
「ですなー」
「「「ですなー」」」
は一緒だっていらんこと思った。



ていうかね!
今私ファフナーで頭いっぱいだからね!
どうしてもいらんこと思っちゃいますごめん喜安さん。脚本家としてはあまり嬉しくないだろうけど。
でも『桐島』は余裕でファフナー切り離して見れたし、この映画は「ここにいること」がテーマのひとつになってたんだからその目線で見ること免れないよね??(自己正当化)

吉岡先生の「どうかしてた」を「そっかー演劇に魂を同化されちゃったんだねうんうん」って思ったり……。
あすなろ抱きってやっぱカップルのすることですよねと再確認したり……。
あの後輩の反応で、ともすれば同性愛を異常と見なす可能性にハラハラして、改めて「自然なこと」として描ける冲方さんに感謝したり……。
いやいやシングルベッド二人で寝てるとこ「睡眠不足気を付けなよー」ってさらっとかわせる吉岡先生を描ける喜安さんだってと思ったり……。
勝手に潜り込むユッコ(てかしおりん)萌えたけどこれ今日の織姫さんですね?と思ったり……。


うん、ごめん、でもアイデンティティーの確立を「ここにいること」として描くのは重ねるしかないですよファフナーファンとしてはさ……。
さおりの結論は「ここにいることを許される」と、ファフナーのテーマより断然弱くて、だから、一介の高校生の結論としては正しい着地点だな……と切なくなったので本当重ねるべきじゃないこれは。

まあ少なくとももう一回は見るので印象も変わっていくでしょう。
なんだかんだ見ていて楽しい、見ていたい映画ではあった。