真昼の淡い微熱

感想ブログ

窮鼠はチーズの夢を見る、俎上の鯉は二度跳ねる/水城せとな

読み返し。

・対面シーン、一人のアップ?、反対側からの対面シーン。水城さんが好む流れ方だ。たしかに読みやすい

・「貴方が今いるところから俺のいるところまで来るのはとても大変なことなんですよ……」
今ヶ瀬バカな子。そうして恭一に暗示をかけている。
恭一自身は流され侍だけあって結構へテロフレキシブルなのにへテロだと思い込んでいるし、思い込ませている。
恭一は今ヶ瀬を好きになることで自身のアイデンティティー揺らいだことなんてないのに。
今ヶ瀬のこういう言葉に呪われて恭一はへテロとゲイに深い溝を感じてしまったのだし、それが自分に返ってきているばかりか恭一が腹くくったあとも囚われてる。
バカな子いとしいね。

・フェラシーンの次のページで過去の爽やか~な思い出振り返るの笑った。
ああ窮鼠はラブコメだわ。男色一代男!←好き

・「運命の女が現れたら俺はスンナリ貴方の前から消えますよ」とかドライに割り切ってる感出しといてその夜切なげな顔でがっしり恭一にしがみつきながら眠る今ヶ瀬さん……笑
ええそれでこそ今ヶ瀬です! その後の全くスンナリいかない執念ぶりをここで示唆してたのか、すげえ

・中華屋にかかってる蝶?蛾かな?
蛾なら今ヶ瀬に甘い蜜たらしてることの暗喩になるし蝶なら恭一という巣にたまきという蝶がかかる寸前というのを表してる。か。

・今ヶ瀬さんもたいがいへテロ規範を内在化させてしまった同性愛差別の被害者だよなあ。
「抱いちゃいけない体を犯して汚してしまっている気がして」。セックスくらいなんだよそんな大それたことじゃねえよ。

・「相手の顔をそっと窺い見る」あ、バタフライ最後もそうしている。快楽なのか。

・今ヶ瀬を巣に引っかけた責任を取ろうと気を引き締めることがたまきをも巣に誘い出すの業ふかい。

・あ、恭一がたまきを追って残された今ヶ瀬がワイン見つめるシーンちゃんと意識したことなかった。
多分無意識的には感じ取って演出効果発揮したろうが。
飲み干しちゃってるね、あのワイン。喪失感味わってるでしょうし。来年はねえなって。

・出張中に電話するよとか、結構ふつーに夫婦やってる。

・やるだけやった後相手の子を不安にさせるような態度取るなんて紳士じゃないぞ→今ヶ瀬は俺を愛してる実感→顔色を窺うことも義務感に苛まれることも そんな必要は無い

・たまきのメールを隠す→今ヶ瀬にやましい相手→たまきと付き合いたい→今ヶ瀬(俺)が邪魔になった……?

・灰皿、観葉植物、ベッド、二組の食器はわかる。象徴として。さてリモコンは??
テレビのリモコンは辛うじてリバる前たまきに嫉妬した今ヶ瀬が投げ捨ててたけどエアコンのリモコンどっかで出てきたっけ?

・終わりにした。愛してなんかなかったのか?? 意気地がなかっただけなのか??
別れて初めて「好きだった」と言葉にできた。つまり確信持てなかっただけで愛してはいたのだ。では何故別れの瞬間冷めたのか?

・あっ忘れてた。「本当に悲しい時は心が閉じて冷めきって何も感じなくなる」からだ。そうだった。
水城さんのことだから理由ちゃんとあると思ったらこんなわかりやすい所に答え提示してくれてた。

・幸せだったんじゃん。やっぱり「俺と貴方は違う」という呪いをかけた今ヶ瀬業ふかい

・「そんなものが恋愛だっていうなら本当にくだらないな」恭一はずっと自分の感情が恋愛かどうかで悩んできたし今ヶ瀬からも悩まされるよう仕向けられてきたのにね

・今ヶ瀬ヒステリをいとおしく思う恭一。組んでた腕をほどき出した右腕を左手で押さえる。「お前の髪を撫でてやりたい」と思っていたに違いない

・そして、玄関でも右手をポケットに突っ込んでその衝動を押さえていた。ああ、今ヶ瀬を引き留める手は左だ……!
撫でるための右手だったのにやむなくビンタと首根っこ掴むのに使ってしまう。腹立ち&必死&欲望まじり。
SMプレイのはじまりはじまり~。ほぐすのにも左手使ってる。笑
撫でるはずだった髪を、右手でわし掴み。

・「戻れるところはもう失ったよ」への疑問。
正直たまきとはより戻そうと思えば戻せる。
だけど「戻れるところ」とはたまきではなくて、その他の女(へテロでいられる場所)でもなくて、今まで取り繕って生きてきた“女の言うことを聞く外面いい自分”である。
傷ついてるたまきに追い討ちかけるように、しかも人生初の自分からフること。更に美奈を皮肉り煽るなんて、今までの生き方では到底ありえなかった。
一度吹っ切ったことで全て喪失したと感じているのだろう。

・今ヶ瀬ほんと往生際悪いな……バス何本見逃したの……。そういう説明の仕方するから水城さん好きだよ。

・ああ今ヶ瀬は、恭一をへテロと思い込むばかりではなく、へテロでいてほしかったのか。
“女と結婚して子供作って天使と浮気すんなよと言える年まで寄り添って老衰”というへテロのロールモデルに囚われて(今ヶ瀬ほんとへテロセクシズムの被害者ね)、その道を歩めるはずの恭一が自分のせいで踏み外すのを怖れた。
だから恭一の「心配すんな」って、そんな今ヶ瀬を理解した上での発言だし説得力もあるし物凄い安心感をもたらす。

・「隘路はお前だ そして俺だ」って凄い解答だーーやっと意味わかった!!
二人の間にある溝や途方もない障害は、“ゲイ”と“へテロ”だから発生するものではなかったのだと、恭一が今ヶ瀬の呪いを解くシーンだったのか!!!
そこからの、「これからどうする?」
恭一側の呪いは解けたが今ヶ瀬自身にかかってる呪いって依然効用中なのよね。腹くくってこちら側まで来た、という解釈をしてると思う。(私もしてた)
解けた呪いを共有してないため、そこに未だ少しの別れの不安は残っているんだけど、流された末の「これからどうしたらいい」でもなく執着の成れの果ての「これからどうしよう」でもない、独り善がりにならないために二人で考えようとする姿勢を表す「これからどうする?」なんだよ。
二人でゆっくり今ヶ瀬自身の呪い(内面化されたへテロセクシズムとありもしないゲイとへテロの深い溝)を解いて“今ヶ瀬”と“恭一”の問題を見つめて橋をかけていこう、と掲げたわけだ。


はーっ素敵!!
でした!
水城さんはロジックで物語組み立ててくれるから考察しがいあるし全ての描写に意味あるからすっきりするわー

・今ヶ瀬の呪いとは、恭一には「へテロの俺がゲイの今ヶ瀬を満足させるほど愛して幸せにしてやれない」、今ヶ瀬には「正しくへテロの道を歩める恭一が俺に流されたというだけで道を逸れてはならない」。

・「貴方じゃだめだ」がNGワードになる理由って、今ヶ瀬の幸せのためでもあるのかそうか。自分の注げる最大限の愛情が否定される+今ヶ瀬が辛いのなら放してあげることもまた愛情、だと。
隘路は恭一と今ヶ瀬しかないので、恭一がゲイじゃないからゲイが注げる愛情がわからないゆえに今ヶ瀬任せという今までみたいなのではなく、ただひとえに「恭一」が「今ヶ瀬」に否定されたときに起こることである。

・私は「二度跳ねる=三度は跳ねない」説を支持する