真昼の淡い微熱

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聖純少女パラダイム/森島明子

安定森島さん。
女子高という箱庭だけれど、そこは世間と隔絶されたユートピアやモラトリアムの場ではなく、「パラダイム」を内包した世間の凝縮であれるわけだ。
校則とは即ち世間規範。

そこで少女たちは、パラダイムと、それに従えない自分の個性の狭間で揺れ動く。

本の電子化すら拒否する頑固な価値観の碧、
品行方正だけど根は全然、でものらくらかわしているユキ、
体制に反発して衝突するリリ。

この三者の配置のバランスよ。

ここでの葵の動線を見ると、最初は規範を疑うことなく従ってきて、規則破りまくりの他者の多様性に初めて気づきショックを受けることから始まり、次第に他者を受け入れいき最後には建設的に規範を変えていく存在として描かれる。

それは取りも直さずシスヘテロ価値観で育ってきた人間がアライ・アクティビストに変貌する姿である。




つまり、感動しました!!
百合に於ける「女子高」という装置の多様化。
「頑固が碧のいいところ」という多様性も認める姿勢。
アクティビストになれる葵がその理由を「単にリリが自由にリボンを揺らせたらいいなと思ったから」と述べ個人のミクロが政治的マクロに発展する点。
「署名しただけ」の荷担にも規則を変える力があると提示。

いや、いい買い物した。
唯一、ノンセクの存在が無視されてるのだけ気になるんですが、まあ、これも安定森島さん……。