真昼の淡い微熱

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妖狐×僕SS/藤原ここあ

よかった。
転生要素あるだけかな?と思ったらがっつり前世ものだった。
いや厳密に当てはめたら「現世」が消えてるので前世ものではないかもしれないが……自我と運命の話だった。


そしてやっぱり運命に抵抗するんだよな……。
それが「いや現世生きたほうがよくない?」にならず肯定されるのは謎解明、命のことがあるからで……っていうのが上手いな。
それで運命を否定しても転生そのものを否定することにならないのはきちんと「その人とは」を考察したからで。
いっちばん誠実だなって思ったのは「僕はあの頃の御狐神くんを愛している」「でも君は僕にとって特別な人だ」のところ。
転生もの、前世ものあるある台詞「前世とか関係なく君だから好き」って大抵説得力ないからいやそれいらないよ……って思ってた。

少女漫画ではないから前世と現世の自我は非統合なわけで、その上で考察の結論が「本質は同じ」だからこそ「前世とか関係なく」とは言えなくなって、この帰結は当然でありかなり誠実。
「本質は同じ」って設定になるのもむべなるかな。
だって「前世」の彼らを捨てられない。
それでいてきちんとバク?出して「過去に囚われる」ことを否定したのも隅々誠実。



さてさて。
どうなるかと思ったらifの転生は驚いた。
ていうか名前みんな仰々しすぎて全然覚えられなかった……。
髏々宮ちゃんとかすごい髏々宮だったからわかりやすいけど。
こんなにも「愛してる」がすんなり響く作品かなり珍しいかも。
みけくんの切実な想いよ。
ifの髏々宮ちゃんと卍里の話が好き。本質は、同じなのだ。
髏々宮ちゃんがSSとして青鬼院を愛するところもよかったな。
なるほど「愛」、多種多様な「愛」がそこかしこにあって全体的にとても温かかった。

しかしラスボスは拍子抜け。まあいいか。


作者さん亡くなってるんだよね……。
1巻表紙から私好みでないと決めつけ読む機会ないと思ってたからなんか今さらあとがきとか読んでおおう……と。
作品が遺ってこうして読むことができるのはありがたいよな。