真昼の淡い微熱

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親友の距離/杉原理生

うわーー好き……!
ていうかうっかり自己投影してしまって泣いた……。
過去のことや同性愛という事実からなる諸々の事情に向き合う体力が既にないのに将来まで覚悟して全力で口説き落としにかかってくるヘテロ
そんなんヘテロノーマティビティーに対して胸が空くに決まってるじゃん……ちょっと自分でも引くほど溜飲が下がった。

そこに至るまでの心情描写が上手いんだな。
それこそ進一が覚悟に至る経緯がすんなり納得できる。
七海視点は全くないのに七海の未練も恐れも拒絶も甘えもひしひし伝わってくる。
友達でいようと自分の心に蓋をして相手にも線を引いて。全然上手くできてないけどその「上手くできていなさ」「自分を守るために無自覚に相手を傷つけている余裕のなさ」がリアル。
序盤本音をさらけ出せない二人のまさにぎくしゃくした距離感に胸が締め付けられた。
進一はどろどろに甘やかして七海の心を解かしてくれ。あとちゃんと昔から好きだったと伝えてくれ?
弾丸飛ばして冷や水浴びせて防壁張りまくってたのにやっと成就した床の上では急にぐずぐずに素直な七海かわいい。これが単なるギャップ萌えじゃなくて「やっともたげた本音がこれかー!お目見え!」という嬉しさがある。進一が「いつもと同じ、隠してるけどだだもれ」と言うのもわかる。

会社の同僚や笹川さん、母妹なんかの周囲のキャラづけもほどよく生活環境を彫りあげていてよかったな。