真昼の淡い微熱

感想ブログ

ユーリ!!! on ICE

これは語らねばなるまい。記録せねばなるまい。
間違いなく特異点
私は渦中を追ってはいないのが残念だけど社会の話を絡めて語らなければ見えない。誰か熱心な人が二次の盛り上がりとか学級会とか現実と創作のゆらぎとか含めまとめてくれないかな。
私は私の感想の限りを記録するので、もっぱら、「アニメと同性愛表現」の話をします。今記事はストーリーラインやアニメ的表現の話はばっさり切る。
これもひとつの社会の外縁でしょうと。


まずこの作品に「性・ジェンダー」タグを付けることを残念に思う。そんなものを考えずに、ただ「愛」のアニメとして他の作品たちと同列に埋もれてほしかった。
でもセクシャリティの側面を語らずにはいられない。



色々な意味で盛り上がってると聞き、人種から人生から多様性を描いていると聞き、そして明るい感じのスポーツものはわりかし好きなので、きっと面白く見れるだろうと途中から追いかけた。
でもこの時点ではどうせいつものクィアベイティングなんだろって思ってた。
腐女子」をターゲットにしつつ、「でも"ホモ"じゃないからねっ☆当たり前だけどねっ☆勝手に"腐らせ"てくれっっ☆☆」ってエクスキューズを入れるんだと思ってた。
だって、今オタク文化のなかにあるありとあらゆる漫画やアニメは、そうだから。
何度も何度も失望してきて、クィアベイティングを経て"正しき"異性愛に帰結した作品群に心を殺してきたから。


だからね、4話、「勇利は俺に何を求めてるの?兄?親?先生?」に並列して「恋人?」を入れてくれただけでもう私は嬉しかったんですよ。
「ありがとう!!!!」って叫んだんですよ。
想定してくれてありがとう。同性愛を当たり前に排除しないでくれてありがとう。同性愛的関係にすることを「腐らせる」なんて言わないでくれてありがとう。普通はありえないものと言わないでくれてありがとう。このホモフォビアはびこるオタク社会の中で逃げ道を作らないでくれてありがとう。私の存在をないものにしないでくれてありがとう。


そしたらさ。全然そんなもんじゃなかった。
7話です。革命の、7話ですよ。
別にこの二人に萌えとかはなかったので、最初は「わーちゅーしたー笑」程度でテレビを消して次の行動をしてたんだけど、服を着替えてるとき、不意に実感が湧いて、号泣した。
やってくれた。
BLという触れ込みでないアニメが、しかもオリジナルアニメが、ギャグにも逃げず、物語の要請上という形にも逃げず、ただひたすら話の盛り上がりに最高の仕上げをするためだけに男同士のキスシーンを描いてくれたんだ。
クィアベイティングから脱したんだ。

ちょうど今ね自分の中にホモフォビアヘテロノーマティビティーの毒が回っている時で、苦しくてなんにでも泣けてしまう不安定な時で、だからというのはある。号泣までしたのは。
でも、先のわからないオリジナルアニメで、どうしても「同性愛」の存在を認めたくない視聴者が「腐」を排除しようとする中で、これをやってのけてくれた意義は大きい。


色々な反発を見かけたけど、色々と怒りに震えてきたけど、とりあえずこのエントリは「はあ??」って声が出た。
BLとLGBTを厳密に分ける必要がまずわからん。BLが差別問題に向き合った上でそれを痛快にひっくり返すことは非常によくあることだ。
別に『ニューヨーク・ニューヨーク』みたいな作品のことを指してはないよ、挙げるのも迷うくらいいっぱいあるよ。BLを馬鹿にするのも大概にしてほしい。
そして、異性愛を描いたアニメは意識するまでもなく氾濫してるのに同性愛を描いたアニメは数えるほど しかない中で、BL原作を使って視聴者層を限定・隔離したりせずに、男同士の限りなく同性愛的な関係をてらいなく平然とやってのけた功績は大きい。
LGBTに踏み込む」ってそういうことだよ。同性愛を異性愛と同じ位置に置いて特殊なものにしないでBL嗜好者だけが見る独占的なものにしないでおくことだよ。社会状況全体を考えないとなにも見えない。どれだけのアニメで作品で社会で同性愛の存在がないものとされ馬鹿にされてきたと思ってるの。
これは私の場合だけど同性愛程度のことに今さら悩む作品なんか見たくねーよ。現実に散々絶望して疲弊してきてるのに。
悩み抜くBLも既にうじゃうじゃあるし。それらの作品はこの人の中で「BLではない」のだろうか。

まあもちろん「LGBTアニメなのでBLではない」「BLじゃない、愛だ」みたいな意見もまた私は嫌いですけど。同じことです。BLを隔離するな。
「ホモなんかじゃなくてそれ以上の愛」なんかは論外中の論外……なんでそこで"ホモ"を貶めるかな……。



わかってる。
こうしてさえ逃げ道は捨ててない。クィアベイティングから脱したとは言い切れない。真っ向から同性カップルを描いてはいない。だからこそ幅広い視聴者層を獲得できたのはわかってる。

みんな「恋愛」パッケージ嫌いだよね、なんでもかんでも「恋愛」にされるの嫌いだよね、安易にそんな陳腐なものにしないでほしいよね。
だからって殊更同性関係のみに反発しつづけ、安易に恋愛関係になる男女のことは当然視するその社会に私は殺されてきてるんだからな????
愛は多様って言うけど、この作品はそれを謳っているけど、恋愛だって多様なんだよ陳腐なだけが恋愛じゃないんだよ。

何をかわからない感情を愛と名付けて、それで、キスをしたって恋人になったって結婚したっていいじゃん。
恋愛を、同性愛を、排除しないで。

結婚……結婚二期でしてくれ……。
二期見たいなあ。この世界ならロシアに同性愛宣伝禁止法なんかなくて、日本でも同性婚法制化されてるんじゃないかなあ。もちろん結婚を選択しない人も等しく尊重されて。
なんて理想の世界だ。住みたい。



まあくどくどと並べたけれど話はきちんとテンポよく面白くて、だからこそ褒めちぎることができる。
まあ私はもっぱらクィアベイティングについてと、どんな形であれ「愛」の称揚神格化を毛嫌いしているのとで目が曇りがちで、ストーリーやキャラを掘り下げて見据えることができなかったのは心残りかな。
特に愛については抜け目ないフォローがそこかしこにあったはず。
そういうアニメが盛り上がってよかった。まず、同性愛を真っ向から描いてほしくはあるけれど。(しかしそれはどれだけ上手くやってもここまで盛り上がらないだろう、理想にならない社会への落胆)
いっこストーリーの話をするなら最後に勇利が引退を思い止まるのがユーリのFPっていう構成が一番興奮したね。最後に主人公を氷上に押し上げる牽引がパートナーの愛じゃない!
あっでも10話バンケットと最後のエキシビションはさすがにときめきを覚えました!すげーな!!

これを踏み台にもっとBLと百合とセクシャルマイノリティーとGSRDと現実と虚構が混ざりあって尖鋭化していくアニメが見たい。