真昼の淡い微熱

感想ブログ

ワールドトリガー~18巻/葦原大介

前に13、4巻くらいまで読んでたのだがこのたび連載再開ということで再読。
最近更新してなかったけどここに感想書いてたよなー?と思って検索したのに書いてなかった。まじか。


めっっっちゃ面白い。
いや綺麗すぎるでしょ展開が。綺麗すぎる。
なんか特に言うところがないよ。ランク戦が面白すぎるし展開にまるで無理がない。
それでいてフルアームズレイジとかヴィザ翁蹴落としユーマとか文句なしにかっこよいし!!!!

初読時は感じなかったのに読み返すうち「この感覚……知っている……」という気分に。
なんだろうかと考えてみたらこれ、あれだ。
攻略サイト見たあとに脱出ゲームやってるときのあれ。
私そうやって何度も何度も脱出ゲーム繰り返すタイプなので。
初めにタオルともやがかった鏡があって、鏡拭いても汚れは取れないけど水に濡らして拭いたら謎の数字列が浮かんで、時計を参考に数字列解いてから暗証番号入力すると箱からバールが出てきて、それで鏡を割るとペンチが出てきて……みたいなひとつの解法にすっきり辿り着くまでの道のりのわくわく感。
グラスホッパーからの鉛弾狙撃で巴くんを落とす気持ちよさとかまさしく脱出ゲーム。
あんまり人に伝わる気がしないなこれ。

ペンチといえば。
記憶がおぼろげで、修がなにか切迫した状況のなかで大きな建物の中に入ろうと度肝を抜く手段で強行突破した、みたいなところまで覚えていたんだけど、なんだかペンチだペンチだと言われてるのでそういやペンチ使って頭ひねっていた気がする……と記憶改竄されてしまった。
なので大規模侵攻のラストわくわくしてたら特にペンチが出なかったので首かしげ。したらそっちかーい。

ともかく脱出ゲームみたいに、手持ちのカードの組み合わせでどう鍵を開けるか、というわくわく感があってめちゃくちゃ面白い。
しかもアイテムじゃないんだよ、一人一人の人間なんだよ、やばい。


感情が論理で構築される物語が好きすぎるんだ。
これが起きたからこういう感情が起こった、だからこんな行動をした……。
という流れのつなぎが自然で、かつありきたりな描写を選ばない。
それぞれのキャラがそれぞれの論理で動いていて、遭遇したときに発生する化学反応こそが見せ場になる。

この感覚はなにかといえばこれも誰にも伝わらないと思うけど水城せとなだわ……。
ワールドトリガー』≒『失恋ショコラティエ』……。

千佳ちゃんのトリオンでラービット倒した次の瞬間失敗するとか、B級上位戦での判断ミスとか、修けっこう欲をかくとこある。
でもそれってあって当たり前だし、欲をかいた、調子に乗った、そのときになんとなく上手くいくんじゃなくてそれなりの因果があって、かいた欲の分だけ過ちを犯すんだよな。


熱情を取り囲う冷徹な現実主義。
安易なロマンティシズムに帰結させないシビアさ。
「気持ちの強さは関係ない」は、これ、『俎上の鯉は二度跳ねる』における「俺が女だったら洟も引っかけなかったくせに」だ。
少年漫画文法にはそこまで馴染みがないのですけど、「同性愛は本能を越えた純愛✨」言説への鼻持ちならなさならよくわかるぞ。
そんなロマンティシズムで包めるような現実じゃねえんだぞ、と。だけど論理で感情を説き伏せるんじゃなくて感情を論理で構築する、という順なので、キャラクターの行動論理を徹底追求するのが先にくるのも水城せとなの作劇と一緒。
なるほど好きになりますわ。


きくちはら……きくちはらしろうくんなに……かわいすぎる……。
「うわぁ」、「やだなぁ」、……。なんかきくちはらくんにベイルアウトシステムがついていて本当によかった。こんな才能もあって動けて毒づいて冷めてる子が緊張を感じずに戦える世界があってよかった……。
それでいて風間さん貶されると熱くなってしまうよいこ……わんこ……好きなもの仲間……友人……。
萌え袖だしカーディガンはかわいすぎるよお。

あとねえ千佳ちゃんが好きだ。
なにもできない自分歯がゆさに動けるようになってラービット撃って出穂ちゃん救出に結実するの大好き、相変わらず弱い女の子が恐怖に打ち克ち立ち上がる瞬間が好きすぎる。
「ふつうの女の子」の記号をまとった子が見せる熱血ど根性にやられてしまう。
千佳ちゃんメンタルやば。
ていうかこの作品の子たちだいたいみんな利他的で自己犠牲的なんだけど分けても千佳ちゃんの罪悪感コンボはやばい。
ボーダーに入った時点で覚悟が決まりきっている。
だ、だれか千佳ちゃんに「きみが近界にさらわれるのはボーダーにとってもデメリットがでかいので迷惑」という話をしてあげて!「きみがいなくなればみんな悲しむ」とかじゃ絶対響かないから!



という……という……。
はあ。連載再開待ててよかった。