真昼の淡い微熱

感想ブログ

Fate/Zero

アニメ。
Fateに触れたのは全く初めて。
なんかこう全体としては「オタクが好きそう!!(だろうな!!)」に全振りしていた印象が一番強い。
腕で銃弾丸を弾く、見えぬ剣、秘められし対城宝具、固有結界。
鬱屈したひ弱な少年が世界の覇者の主人になって気に入られていくとか。
比重としては心理面が中心で意外と戦闘シーンが少なかったけど、だからなのか戦闘のたび恥ずかしげもなく「オタク、好きそう!!」な飛び道具が出てきて笑っちゃった。

しかしながら聞いてねえよ~セイバー川澄綾子かよ~~~!!
私は!!騎士C.V.川澄綾子が魂に刻まれている!!!
私があなたをお守りしますけど心は弱い川澄綾子……スーツに手袋最高すぎるよセイバー、オタク……。
でも戦闘服ダサいのどうにかならんかな。

なんか龍之介の最期が気に食わねえんだなあ。
殺されてんのに灯台下暗しエンド、狂人としての一貫性、あんまり好きじゃない。
なぜ子どもだけを狙っていたのか、その卑近さを最期に暴いてほしかったのに、狂人が自分が狙われてなお狂人でありつづけるのは、凡人の視聴者には安心しかもたらさない。
いや錯乱したとて別に何かを突きつけるわけではないが、なんかトリッキーさでシリアルキリングが免責された作劇になっていてずるいよね。



まあしかし虚淵玄、趣味が合う。
龍之介の話は不満という不満ではないにせよその不徹底さが趣味じゃなかったんだが最終話は合う~と思う。
徹底してて。
雁夜おまえ……「お父さん♡」の夢を見れただけでも偉いよもはや。
教会に葵さんが現れたとき「イヨッ待ってました!」て手を叩いたら最後綺礼とギルガメッシュが上から眺め興じててウケた、私のような視聴者の立ち位置を用意してくれてて実に親切である。
最後もこいつらの視点があったから切嗣の心を破滅させることができたのだ。
そういうものを愉悦したい、そのへんの趣味が合う。

雁夜殺人犯にさせる徹底さが趣味なんよな。
この殺人完全に旧劇場版エヴァラストと同じコノテーションを有している。
他者を自己の外在だとべっとり見なしているにもかかわらず己のその知覚を認めていない者が、他者の他者性に触れたとき、自己を根底から脅かす異物として他者を排除せねばならない。
ほんとうに殺人犯の論理……。


切嗣の平和のための人殺し正義はいかにもオタク好きするやつだなあと眺めていたら最後否定されてふつうによかったな。
と思ったけど一抹噛み切れなさが残り、その後staynight見たら切嗣正義を相対化し始めててがっくりきましたね。
「ただひとつの普遍的正義なんてないんだ」てお前あんだけ悪引き受けといてまじであれを普遍的正義だと思ってたんか?
とんだピュアさだよ。自分のやっていることは正義ではないとわかっていてこそお前のようなキャラクターは完成するはずだろう。
百歩譲って切嗣自身はそれでいいとしても物語はそこに批判を入れようよ。虚淵玄ならできるでしょ、切嗣を度しがたいピュアとして描くことくらい。雁夜のように。


10話ラストは泣きましたよ。
だってお前ちゃんとふざけんなって言ったもんな、そうだよ世界はふざけんなと叫ぶに値する。
言っていいよ。そういう涙である。
ヒルに興じていらんねえよ。

セイバーあのまま士郎に呼び出されるまで自責して繰り返す時を過ごすの好みだけどぞ臣下のバーサーカー化まで自分のせいだとするのは傲慢だぞ。
やっぱりセイバーが世間知らずの小娘扱いされんの納得いかね~~~。
いやギルガメッシュイスカンダルがそれを言うのは構わないがこれもまた物語がそれを肯定すんなよと。
綺麗事の大義なんか果たせるはずないから我欲に生きろておまえ、極端が過ぎる。
我欲も結局合理的ですらないわけで巡り巡って自ら整えたはずの秩序を崩壊させるものなので……王ならば、ね。