真昼の淡い微熱

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イスラム国の正体/黒井文太郎

体系的でわかりやすい説明書。
日本でやっとISISに関心が向けられてきた2014年12月刊行。
なのでとっつきやすい。

シリアでアラブの春が失敗し、アサド政権下でシーア派が幅をきかせた。
そこで大量虐殺が行われたので、スンニ派(とか?)が立ち上がり内線が始まった。
だからシーア派と対立してたISISはそこに漬け込み勢力拡大できた。
シリアでは打倒アサド政権の大きな勢力もあったけど、そこの理念はあくまで「打倒アサド」に留まり、他方ISIS「理想のイスラム世界建立」を掲げていた。
政権を崩すだけで状況は改善しなかったアラブの春の失敗が記憶に新しいシリア国民はISISに流れた。


オバマはそもそもブッシュ政権の反省を踏まえ「軍縮」を掲げていて、最初ISISに干渉しなかったことが事態を悪化させた。アメリカくらいしかISISを制圧できる軍事力を持つ国はないから。
けど、そうもいかなくなったので、アメリカ国民の人質が殺されたことで国民感情が高まったのをきっかけに空爆を開始。
遅すぎとか言われたこともあったみたいだがそもそも今まで他国の戦争に首突っ込みすぎて無駄に兵士を死なせることに国民の抵抗感が強いのだから仕方ない。



……私の関心のあるところのまとめはこのくらい?
残虐さを押し出すところが他の過激派との違いだが、それを理解してる人ばかりが入ってくるので扱いやすいとか。
何故残虐か、というところにはあまり答えらしき答えはなかった。

北海道の学生がISISに参加しようとした事件について「あまり深く考えてなかった」とあった。
いやまあ有り体に言えばそうなんだろうけど、他の評論で「日本のイスラム研究家(名指し)が現況を歪曲してぬるい情報しか学生に伝えてなかった、学生は現実に閉塞感があり別世界を求めていた」っていうの読んでたから、「深く考えてなかった」というのは可哀想かなと。
きっと状況が違えば、時代が違えば(遡れば、あるいは下れば)日本のカルトにハマってたろうな。