うわ面白いぞこれ。
さすがと言うべきなのか。でもわりと油断してたぞ。
『トーマの心臓』とか好きじゃなかったし、ていうかもっとホモフォビックなのかと思って警戒してた。
禁断と謳って自己陶酔に溺れてくような面倒くさいやつ……。
そういう予想とは全く違った。
思ってたよりはホモフォビックじゃなかったけど、まあ差別表現は所々滲んでいましたね。
「恋愛はふつう男女でするもの」
「生物学的に男女恋愛が当然、性=生殖」
「同性愛は人間にしか見られない」←この誤情報っていつどこの発祥なんですかね
「周りに女がいないから機会的同性愛に走る、一時の気の迷い」←これBLで見たことないなそういや。ちょっと前の百合ではあった、百合はBLの歴史を追ってると思うと感慨深い
まあでも今でも差別表現あんま変わってない作品いっぱいあるな!
笑う笑う。もちろんそうでないのもいっぱいあるが。
えーと内容。
キャラの背景書き込んでるから、「何故このキャラはこうなのか」という奥行きがある。
セルジュがジルベールに拘るのも自分の母親が娼婦だったからって説明があるし。いやそれだけじゃないだろうが。
ジルベールの儚さは魅力的だな。
火中の栗を拾う(慣用句的にも)セルジュかっけえ。
パスカルの姉という「女」を通らせてから「男」のジルベールに視線を戻す手法凄いなと思った。(初期百合にはできなかった)
そして「男女がふつうだと言うなら何故男に惹かれるのだろう」と、「苦悩」ではなく「疑問」に落とし込んでいるのが好感。
その疑問自体同性愛差別の結果なんだけど、初期同性愛ものなんて禁断に手染めた苦悩ばかりだという偏見あったから。
骨子の揺るぎなさ、枝葉の鮮やかな切り込みと展開に惚れ惚れする。
パスカルの将来の夢語りとかピアノの才能セルジュの出自とか。
試し行動して真摯に入り込んできてくれたセルジュに惹かれていくジルベールめんどくさかわいい。
叔父甥関係もの根強いのね。
セックス(ウケ)が自罰として描かれるのね……。
そして「あいのあるじょうねつてきなはだのふれあいがしたい」って、ああ女性の立場を付与されてるなと。
別に投影を狙ったわけではないだろう、というか女体から離れる装置であったとは何度も論じられているけど。