真昼の淡い微熱

感想ブログ

しまなみ誰そ彼1巻/鎌谷悠希

うああああ……いてえ!!
びしばしいてえよ!!!


これ……うん、そう、これ。
これこそ日本の「差別」と「抑圧」。こういう作品を求めていた。
未だに「同性愛は異常」という明確な言葉を用いる人もいるにはいるけど、最近はもうみんなそれはおかしいって知ってる。
でも。
明確な言葉ではないんだ。
同性愛は異常/変/ふつうじゃない/ありえない/おかしい/ネタ/笑い者/特殊性癖……
そういう価値観を刷り込ませた空気を私たちは吸っていて、そして再生産している。

っていうことをこれでもかと突きつけられてとてもいたい……!!!

「お前、"そう"なん?」
「ああ、それ?」「兄貴が送ってきた釣り動画だよ。引っ掛かってさ。」(『しまなみ誰そ彼』1巻p16 鎌谷悠希)


……うああああこの絵つれえええ……。
その昔好きになりかけてた女の子に真面目な調子で「同性愛って気持ち悪いよね」って言われて「まあでも自分に関係なければいいんじゃない?」って台本読むようにすらすら返したのを思い出したつらい。
「バカじゃねーのホモなんて。きもいわそんなの」
自傷行為わかるー!!
なのに好きな人に否定されるとそれをリフレインしてしこりになってしまうたすく、溺れてる、つらい。


大地さんがさらっとカムしたかと思ったら早輝さんがカムアウトしたの!?と怒るのもまた。
その昔彼女との関係を理解してくれそうな友人らに言おうよって言っても「はあ?言えるわけないじゃんお前馬鹿?」って彼女本人にあーあーあーほんとあの内面化ホモフォビアに散々罵倒されて泣かされた過去がーーあーーーー!!


瀕死。



「たすくがホモじゃないってわかってるから。」とか「襲ってくんなよ~?」とか「親御さんはかわいそうに。」とかもうやめてよ……。
リアルでビアンにカムされてもその人に対してさえ「僕、僕は「そんなの」じゃ、」という言葉が出てきてしまうのがめっちゃつらかった。
自分を殺して殺して殺してきたんだ。


早輝さんと大地さんが額寄せて結婚式の話をするのを見てやっと自分の欲望を肯定してあげられる、そして釘ひとつやっと抜いて、「好きな男の人が居る」と人に打ち明けられる……そして返す言葉は「うん。」それだけでいい。
すごい自己受容を描いてくれた……。


聞いたところによるとどうやら作者さん自身アセクシャル自認の方らしいので今後一切の心配がない。
あっでもここで恋愛感情ない人種を否定するのね残念、みたいな魚の小骨への予防線がいらない。
あと差別を「田舎だから」という描き方をしてなかったのもいい。きっと意図的。
都会にもこれくらいの差別飽きるほど沸いてますからね。


はあ。つらいけどよくぞやってくれた……!の気持ちが大きいので2巻以降も楽しみです。
ご当地漫画としての色も全面に出ていて尾道の風景がたっぷり堪能できて、まあ今ちょうどファフナー見ているのもあるのでうふふって感じ。
背景すごく綺麗。