真昼の淡い微熱

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輪廻転生を考える/渡辺恒夫

うーん。
遍在転生説、合理的すぎて、というか合理性のみを求めすぎていて、合わない。
世界に対してそこまでの理屈を要求しますか、という。
わかるよ、死んだら来世は未来ではなく過去や現在に転生する可能性なんかは、わかるよ。
でも息づいている一切の人間が別の「私」の生だと言われても……そこまでの理屈はいらないかなあという。
いや思想としては理解できるけど採用したくはないなと。

あと個人的に少女漫画をいちいちサブカルチャーの隅っこだと言い張るのも気にくわない。
「まさか私の思想がこんな辺境文化である少女漫画で描かれているとは!」みたいな。てめえ佐々木淳子は偉大な作家なんだからな。

しかしやっぱりこのへんの80年代~90年代のサブカル系の若者らはアイデンティティーの揺らぎを異常に恐れていた感じが読み取れる。
現代は確立してあるところの「私」が揺らぐことを恐れるけど、この時代は絶対的な価値観が崩壊しようとしている頃、またはしたばかりの頃だからなのか、そもそも「私」自身が曖昧で「私は代替可能な存在なのか? 私の存在は無意味なのか?」というところから始まっていて前世ブームもその生に意味を探る潮流のなかにあるような。

きっとその先駆けとしての著者がありここまで究極の合理的絶対自我の理論を確立させたんではという印象。