真昼の淡い微熱

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逃げるは恥だが役に立つ9巻/海野つなみ

そこそこよかった~~~!お疲れさま!
って感じの総評。
結局ドラマ1話も見てない。どうしようかな。

なんというか、本当に、連載当初の2012年からだいぶ社会の空気は変わったよね。
確実に違うよね。
このマンガがすごい!2014で8位か。これも「自分のテイストが時代の空気に合ったのかも」みたいなことを作者言っていて、それで2016年ドラマ大ヒットと。
ぴったりと時代の感性に「合った」のが2016年なんだよな。


「呪い」。呪いな。私自身最近呪い呪い多用している。
が、この百合ちゃんの「そんな恐ろしい呪いからはさっさと逃げてしまうことね」、他のメディアで引用されすぎてこの9巻読む前にもう腹立ってしまっていたよ。
だってその呪いそんな簡単に逃げてしまえるものじゃないじゃん!それを自分の気の持ちようで逃げられるだなんて恥をかくとか以前に無理じゃない向こうが呪いをかけてきてるんじゃない!
それを世間知らずの若い娘への説教として溜飲を下げていいのか、呪いをかけてくる権力の存在(ウテナでいう蜃気楼)を無視して安易に引用し個人に責任を負わせるその神経どうなのか、結局時代の感性はここまでなのか、というもやもや。
作品内レベルではそういう呪いが解ける範囲で解けた、逃げられることだったのだけど。


まあ作品外批評はさておき作品としてはこの安奈ちゃんをいい影響も与える憎めない人として描き、百合ちゃんへの攻撃も誤解と知れたあとすぐ謝るキャラなのは好感だよね。
あとゲイの描き方が終盤だけまともになってるのもずるい~~~ここにも時代を読みとることができる~~。(ドラマ版は最初からまともだと聞いてそれは見たいんだよな)

結局平匡とみくりはマジョリティーもマジョリティーに落ち着いたのな。
っていう見方は乏しいのかもしれない、それまでの紆余曲折が『逃げ恥』を『逃げ恥』たらしめているのだから。結婚式しないし。
それでも自分達の選択として形には残したいねというカスタマイズ。婚姻して終わりではなく結婚という「生活」を切り盛りしていくラスト。
最近牧村朝子さんとモリガさんが「脱婚」してこれ時代を先取りしすぎて世間に伝わらないんじゃ……ってはらはらしたんだけど、私はこの二人にも「やっぱり私たちには婚姻パック合いませんでしたね」って脱婚してほしいかもしれない。

百合ちゃんと風見さんもな~~。
いやいいんだよ、処理としては完璧なんだよ、マジョリティーに落ち着いたみくりと平匡と対比して婚姻を選ばないかもしれないし独り身をなおざりでなしに充分根拠を伴って肯定してるし年齢という「呪い」も絡めてさ。
だから安心してあっちのふたりは結婚させてしまえる。
でもカップル化か~~~いやほんといいんですけど……「長くは続かない」って最後の最後に言い切ってるのはびっくりしたけどびっくりすること自体まあ私の囚われたもやもやではあるんだよな……だから処理は完璧なのよ。
高齢処女だって掘り下げるに値する問題だしね。実際ずいぶん作品として深まった。
結婚にしても恋愛にしてもセックスにしても挿入にしても食事にしても家事にしても「してもいいししなくてもいい」、あらゆる選択が可能になった時代、同性間結婚はその選択すらないままである時代、個々人が自らの選択でカスタマイズする時代。
あっだから平匡とみくりは名字どうすんだ!?触れないの同姓強制問題!?
まあな夫婦間平等を追求してきたのであって社会のなかにある夫婦という問題意識は薄かったけどさ……。

「これはあたしの問題であってそれを相手に背負わせるのは筋が違うと思うの」、ああだから風見さんは好きになったのよなあ。
「自分に自信がないことと僕と釣り合わないっていうのは関係がない」と冷めてしまうような彼だから。