真昼の淡い微熱

感想ブログ

ズートピア

なんかこう……ディズニーは毎回「洒脱だなあ」という感想になる……。
面白いんだけど、すべての描写に余すところがなさすぎて、隙がなさすぎて、余剰と情感を愛する私は一歩引いてしまう。



いや、面白かった。
冒険譚はいつ見ても爽快。
ブルーベリーは最高だ。

あとアナ雪に対して「結局マイノリティはその特性を社会の役に立てることによってしか認められないのだ」とモヤっていたのでジュディが知恵や勇気によって夢を叶え事を成していく様はスカッとした、アップデートを怠らねえなあ。
まあこれも「役に立たねば認められない」と批判することはできるだろう。

公開当時から「差別反対者も無自覚に差別者になってすごい」くらいはネタバレがあり、このへんのネタバレは私にとって重大なので初見時の楽しみが充分に削がれてしまったため見てなかった。

のだけど、記者会見のシーン、泣いてしまった。

え、すごいと称賛していいのかこれ。
ネタバレなしで見てたら私も驚きと称賛をしていたかもしれない、でもこんなふうにジュディが責任を負わされてしまって、いいのかこれ。

大きな構造のもと、差別されつづけて、巨体動物に囲まれながら生活していて、あんなん慣れてなければ日常的に恐怖に脅かされているも同然なのに。(私は日本人女性の平均身長だけど、街中で幼子含む150cm以下の人を見るたびいつも怖くないのなら慣れだよなあと思う)
それでもニックにペンを渡して、そうだ信頼とは自らの一部を差し出す勇気からしか生まれないのだと感動したのに、構造に巻き込まれ、記者会見という圧力の場で草食動物たちに明らかな期待を発され、
清く正しくありたかったジュディさえもが大きな構造に負けてしまったがためにニックを傷つけることに泣いた。
「負けた」のだ、弱かったから「負けた」のだ。
その弱さはジュディが自分で引き受けなければいけない部分もあれば、そうでない社会や環境のせいもある。
だってあそこで力を誇示したニックを警戒しなかったら死ぬかもしれない世界にいるんだから。
そんな勇気のせいで死ぬのは弱い者だけじゃないか。ライオンなら怯えるわけがないのだ。
「負けた」ことを見ずに「ジュディも差別していた」描写をすごいと言えるのは欺瞞だ。

いや用意のない場では聞きかじった偏見をそのまま垂れ流してしまうという差別の再生産構造の描き方はうまいなと思った。

そして「生物学的に」!!!!きました!
これですよトラウマですよ得体の知れぬ生物学な。


しかしてっきりジュディも差別者だったというのは、より弱い動物を差別したのだと思っていた。強者差別か……。
差別というのは社会的構造からしか生まれないんだよ。
人種差別と見るなら「強者」ではないのかもしれないが1割の人種が残り9割を差別する歴史なんかそっくりそのままと考えると肉食動物差別は人種差別と重ならないよなあ。アメリカの人種構成の歴史はわかってないですが……。
マジョリティとマイノリティというのは数の多寡のみを原因とする言葉ではないし。食うことのできる強者性はどう考えてもひっくり返らないし。


しかし肉食動物なに食べてるんだろ。じゃぱりまんかな……(言いたかっただけ)