真昼の淡い微熱

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響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~

ユーフォニアム~~~~!!!
最高だよ!!
これぞ、これぞ響けユーフォニアム

もう、終始「ユーフォ!安心安定変わらぬ完成度!」とぶちあがってたんですけど自由曲!!!!!

ところどころ差し挟まるのぞみぞはサービスカットにとどまるのかなあ期待はせまい、と思っていたから、あんまり待ち構えてなかったですね。
リズでした決壊…………

おまえ、みぞれの愛よ。希美の覚悟よ。ふたりの愛の、後日……。
後日、来てしまった。
みぞれソロあまりにも主役。
ぼろぼろに泣きながら考えていた。
今回はのぞみぞの話はもちろん全然見えてこなかった。(原作と違って)久美子はふたりのことを塵ほども把握していない。
そのことが、なんと『誓いのフィナーレ』の重奏感をいっこ成立させていると思った。

コンクール。すべての事件が、すべての感情が一極に集積し昇華する場所。
美玲の自己嫌悪も優子の気負いも求くんの後ろめたさも秀一の諦めも加部ちゃん先輩の苦悩も奏の闇も全部。
観客が見たひとつひとつの揉め事をきっと知らない部員はたくさんいるし、同時に他にも数多発生しただろう事件を私たちは知らない。

でも、希美とみぞれのことは知っている。知っているのに描かれない。
描かれないのに絶対的な存在感を匂わす希美とみぞれの感情を想像しながら見るということは、他の様々な人間の様々な感情を想像することと同義ではないか。
そういうことを考えていた。
それが北宇治高校吹奏楽部という場所なんじゃないか。


今回見てて思ったのは、ユーフォって人間の多面性を描く物語なんだと。
裏テーマとかっていうより、吹奏楽部内の人間関係を描こうとしたら必然的にそうなる。

気負いきってしっかり者の部長になった優子が、香織先輩が来た瞬間「後輩」に戻ってしまったときに思った。
こういう部活独特の上下関係のみならず、例えば夏紀の激情を私は知らなかった。
(おまえこんな厄介な問題自分に抱えながら希美のことでろでろに甘やかしてたのかよ……)
秀一といかにも高校生的な青春恋愛をやった次の瞬間には麗奈とまるで共犯者のような結びつきを声に乗せる久美子。

距離があると思われた美玲は本当は輪に入りたくて泣く不器用さんだったし、気むずかしそうに見えた求くんは緑輝にだけ崇心を隠さない。
声優さんも楽しいんじゃないかなこの作品、とかって思ったりする。一人の人間の色んな側面を表現するから。


そう、だからユーフォはいつだって感情のピークを「本音の暴露」に持ってくる。

感情を、上手く表せなかったり隠したり特定の人の前でだけふいに出すことができたり。
そんな人間の心を『響け!ユーフォニアム』は自ら暴かせる。泣きながら。怒りながら。昂りながら。

だから今回は奏というキャラクターが久美子にぶつけられた。
奏の本音を引き出すために、久美子の本音が暴かれた。
あすか先輩が久美子に投げかけた手痛い問いへの答え。傍観者として安全地帯にいたままでは得られないもの。
ユーフォは本音の吐露が絶対的キーポイントになる作品だ。ぶちまけられることで理解が深まり、揉め事はたいがい収束する。

結構な楽観主義ではないか。(武田綾乃さんは単純な性善説でもないと思うが)
そこが『リズと青い鳥』との決定的な差異だ。希美とみぞれだってユーフォの文脈では「みぞれの本音が暴かれたことにより希美の誤解が解け、すれちがいがなくなる」だったのだ。



お前を待っていたぜ久石奏……!
原作はパラ読みした程度なので、漏れ聞こえくる奏のヤバさはアニメでお目にかかりたいなとわくわくしながら待っていたらこれだよ。
美玲のことけしかけてたの、美玲を矢面に立たせて検証材料にしたかったってことなのだろうか?恐ろしいな。
しかし全国まで行く吹奏楽部が実力主義を採用せずに1年をやっかむなんて妄言どれだけ人間不信なんだ……。いや、美玲と低音パートの距離感を見て色眼鏡から「やっぱりここにもあるんだ!」と早合点してしまったのか。

「塚本せんぱぁい」とかいじって先輩との距離を詰めようとしてくる後輩、いる……!
だがその先輩、去年空気読まずに1年でトランペットソロもぎとった先輩と引力で結ばれてるんだよなー!
知らないだろうけど!多面性!
「奏ちゃんを守る」って言葉、マジもんだからな……本気でこいつ去年「裏切ったら殺してもいい」って愛の告白した女だからな。
相手が悪かった。いや、よかったな……。


からの、「悔しくて、死にそう」はフィナーレにふさわしい最高のまとめだった!
矛盾するようだけど「そして、次の曲が始まるのです」で締められても違和感がない。
あーもうすっごいよかった。さすがです。



なんだろうなあ、こんなにエピソードがぎゅっと詰まってて、次から次へと揉め事が起きて、なのに駆け足感がまったくないの。
感情がわかるの。
もはや私はあすか先輩が登場しただけで泣くような終始涙腺ゆるゆるだったので。
優子、優子おお! あの一瞬に、その後の演説に。
自分は気負いすぎたからって久美子に次のバトンを託した優子を観客みんなにわかってほしかった……!
夏紀もさあ、希美に奏に優子にと気を遣いまくりじゃん!? あのとき優子の隣にいられたのは夏紀だけなんだよね来場特典カードはなかよしかわでした。
そりゃあみんなの前で愛を返すよねデレ優子。

原作チョイスと演出と編集、これがいちばん京アニの信頼してる部分かもしれない。
だって「え!?漫然とエピソード並べ立てただけ?軸が見えない!」ってなる商業作品いくらでもあるじゃん、京アニ、そういうのに遭遇した覚えないんだよね。自分に合わないとかつまらないとかはあっても。
作画はもちろん信頼というかなんなんだろうあの矜持は。ブラッシュアップされてくたゆまぬ努力が。



そしてですね、原作をパラ読みしてたのでヘテロがくる覚悟はしてたんだけどまさか初っぱなから告白とは恐れ入ったよね。
急激に気が削がれたが、まあ見てのとおり持ち直したので。
みかん飴はにやけるし、ていうかあの張りつめたふたりだけの世界なに!?一瞬に詰まった引力、貫禄がちがう。
原作ラストがこれからヘテロ始まるよ!秀一にフォーカスされて終わるよ!って感じだったのでCパートに戦々恐々していたのだが、別れたまま終わってよかった~!!フィナーレ!!!

しかしまあ、のぞみぞはもう久美子の目の届かぬところに行ってしまうということで、『リズ』その後しかもコンクール本番が描かれてしまっただけでもしばしおっもいのだが、それすら思い出となりふたりの人生が遠くになってしまうのはやはりさみしい。もやもやする。
あんなにも愛を羽ばたかせたオーボエ。「支え」たフルート。
確固たる意思を湛えた決意しか読み取れなかった、そのなかの感情は、見せてくれなかった。ああ、全部は見れないのが、ふたりなのだ……。