真昼の淡い微熱

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『AVについて女子が知っておくべきすべてのこと』/澁谷果歩 『AV女優ちゃん』1巻/峰なゆか

あーなんかこれはセットだな?

相互補完。
紗倉まなさんとか、戸田真琴さんのエッセイが好き。
AV女優のこと、私も俗だから野次馬としての興味もある。
のと同時に、無関係ではいられないのだという感覚もある。
性の話がそもそも好きなのもある。

月1性病検査が義務付けられたことが、澁谷さんの本では「良いことだけどデメリットもある」テンションで書かれてて「いや月1でも怖くねえか!?」と思ってたら『AV女優ちゃん』でちゃんと突っ込み入ってたし、「HIV感染が判断できるのは感染3か月後」という情報も知れる。
と思えば澁谷さんの本で「以前はメーカー負担だった検査費用が、強要問題以後検査が当然になってからは自費負担に」と書かれている。
そういう意味で補完だ。

そいえばモザイク不要論にかねてより疑問があって、モザイクなかったらゴムつけてるのバレるから生が当然になっていくんじゃ……と思ってたら案の定、澁谷さんの本で「モザイク狭く薄くなってから生膣内射精を撮るようになった」と。
要るよな、モザイク。
どちらの本でもその際女性スタッフがもらってきたピルを渡される記述がある。
強要問題以後はコンプライアンス意識向上で自分で行くようになったらしいが、そうなるとこれも自費なので女優属人管理になる。どうすりゃええんや。メーカーが出せや。
しかし「ピルを渡すことで生膣内射精作品に出演してもらいやすくするため」ってのも怖い。
『AV女優ちゃん』でスカウトマン、単体契約できたら毎月出る作品の分だけ1割もらえるってなんか納得いかねえ。
まじでその分で検査費用とピル処方費用出せよ。


『AV女優の社会学』の「強制/自由意志の二項対立ではない。"エンターテインメント"を提供する女優として自己を確立していく」過程が克明なのですが、それが本人らの口から語られる二冊であった。
としても、二人とも強要問題以前にデビューしているので、ほぼ強要じゃねえかそれっていう最悪な業態がしかしカジュアルに淡々と描写されてエグい。
アダルトグッズモニターかと思えばAV、も、これ澁谷さんが聡明で人生肯定しているからいいけど、いいってもんではない。
ここは『AV女優ちゃん』が圧巻だった。
最初爆乳ちゃん馬鹿にする峰なゆか、で始まる。
峰さんの漫画そこが苦手だから読んでなかった。基本的に人を馬鹿にしている。
しかし爆乳ちゃんの人生が語られる……「田舎から都会に出てきたばかりで孤立している」奴が狙われやすいのはどこの詐欺集団でも同じだな。
100万の使い道を具体的に想像させることで、「手に入ったかもしれないものを失う」体験をさせる、「人は幸せになりたい欲求よりも不幸になりたくない欲求のほうが強い」はちょっと打ちのめされてしまった。

そして出される給料……。
企画5万はあまりに安すぎて引く。色んなリスク(性病・妊娠・差別・親知人ばれ・セクハラ・叩かれ・ヤれる女扱い・恋愛/結婚障壁)負うに足る値段ではない。
ただ、使用料で出演後もギャラ入ってくる仕組みになったっていうのは良かったなあ。
100均で買ったものイベントでオークションに出して集めた金は当然女優には入んねえんだろうなあ……。
『AV女優ちゃん』のイベントでの身体障碍者のエピソード、Twitterで持て囃されていて、そこに嫌悪感を抱いた。
差別されている弱者が弱者を差別する構造を今更気づくんか。
障碍者は清廉潔白で差別しないと考えてる偏見が見える。それを突き付ける描写だが。

AVに出るとプライベートセックスで中に出されるとか実害でかくねえか。
業界外の一般人ほど勝手に触ってくるとか。ファンタジーでもなんでもない。
あとシズル感とかいって冷水スプレーかけてくるってのが地味に無理すぎる。人間と思ってる相手に冷水かけるか?
変なお姫様扱いとかじゃなくてペットボトルにストロー差しておいてくれる気づかいが一番うれしいっていう澁谷さんの言葉を肝に銘じろ。ここは田房永子さんの『男しか行けない場所に女が行ってきました』とも併せて。脱ぐ女優をちやほやせねばならない空気感の話。

この二冊は本当に、AVに関わる全員に読んでほしいが。
最終的に性教育に行きつくよな。