真昼の淡い微熱

感想ブログ

燃え上がる記者たち

感想という感想は出てこない。

すごい、としか言えない。恐ろしい。彼女たちに何も起こってほしくない。

こんなにまで勇ましい政府批判・社会批判のメディアという姿がまず新鮮であった。
インドの脆い民主主義を支える。
が、10年で40人ものジャーナリストが殺される国という。
そんな中で、従来カースト上位の男性が占めていた記者の職を、カースト外のダリット女性である彼女たちが行う意義。
専業主婦が当然で夜中まで仕事で出歩いていると後ろ指を指されながら仕事を続ける信念。
結婚準備金が十分に用意できない家が「嫁ぐ」先に選べる夫はたいてい専業主婦を望むという。
ミーラの、10代で結婚して子どもを産んで婚家の隣の学校に通いながら授業中でも赤子の世話をして、っていう生活さえも、彼女の能力と環境と運があったからできたこと。

スマホは女性を「見られる客体」から「撮る主体」へと変えたという。
この映画ではたびたび撮るなという反発が描かれる。政治家、警察、村人。
だがそのスマホにしてもヒンディー語設定自体がないため英語が使えない人は仕事もままならない、とか、家に電気が通ってないから充電できない、とか、障壁が高い。

レイプされて殺された人の遺体に群がるカメラマンたちという構図はかなりむごいものがあるが、それ以上に現実がむごい。
マフィアの違法採掘のせいで殺される、トイレすらまともにない衛生環境の村、ヒンドゥー教至上主義な政治でイスラム迫害。
政権に守られた自警団が政治を語り「一頭の牛を守れば3億の人類が守れる」なんて平気で言えてしまうのはナメられてるから?と思ったが、映画の端々からも政治と宗教の分かちがたさが思われてしまう。
しかしその中で圧倒的再生数を得て、ほんのわずかであっても村の衛生環境の改善や性犯罪放置への治安改善など前進していることが、すごいとしか言えない。