真昼の淡い微熱

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ふったらどしゃぶり/一穂ミチ

なんか萌えとは違うところで良いなと思った。
ラフな日常会話とか。徹底した雨の描写とか。生活感とか。
というか、萌えとしては私は焦れて焦がれてある時急に報われるのが好きなので、最初から焦れた相手からは報われないとわかりきってたからそのへんのアンテナは張ってなかった。

「性欲とは汚いものではない」という価値観を提示する印象を受けたが、それはもう知ってるよ……みたいな気しかしなかった。
ミクロな話で、一顕が自分の性欲もアイデンティティーにしていて、それを否定される辛さはさもありなんだが。

しかしまあ特筆すべきは女性描写ですよね!
「あなたに愛されてる気がしないの」が定型句のBLでこんながっつり女性と愛し合ってる主人公って!
しかしこの設定だからこそ出来た事と考えるとまじで女性向けって何を望まれてるんだ……??
広い意味では「あなたに~」に代表されるような精神的処女性と同種かこれ?

「性欲」=「男の部分」みたいな書き方で、まあだから和章はノンセク設定にならなかったんだろう。しかしまあ切ない。
そしてだからBLなんだろう。(「これBLでやる必要ある?男女でいいじゃん」には賛成しないが)

セックスは性愛者にとって思った以上に重要だし、ノンセクにとって思った以上に不要。向き合いもせず譲歩できることじゃない。
っていう書き方で、まあかおりの描写は切ないとも酷いとも取れるけども、そこはフラットで安心した。
まあ主人公が主人公なんでセックス至上主義寄りなのは確かだが。

てかそこまで通底したテーマで堅実な作品だから、いやそのテーマが「セックス」なんだから当然と言えるかもしれないが、濡れ場が普通のBLBLしててびっくりした。
けど最初のぎこちないテンションの低さ色気のない会話は特殊で面白かったり。