真昼の淡い微熱

感想ブログ

憎らしい彼/凪良ゆう

最高エンタメすぎるな!?

まず、萌えるよ、萌える……これいちばん大事……ここさえクリアすればBLはオールオーケーなのにこんな、私の読みたかったものとか価値観に対する真摯さとか伏線のそつのなさとかキャラの無駄のなさとか、しかもそれらすべてを一定量かつBL文法に落とし込みながら濡れ場サンドも完璧な……こんな……いいのか……。

まずねなによりなにより大事なことは凪良さんのセクマイとの向き合いかたね。
これが私は読みたかったんだよ。現実にある差別とか諸問題を、説教くさくならず、萌えにくるんでコミカルに描くBL。
両親に清居の魅力を熱く語る平良、いじめられてるのか友達できたのかゲイなのかぐるぐる混乱する両親、冷や汗をかく清居。
「ゲイカップルのカミングアウト問題は繊細なんだからこんな出会い頭の交通事故みたいにやるべきじゃない」
これ!!
単に恋人の両親へのゲイバレを焦るんじゃなくて、ゲイのカミングアウト事情がいかに社会的事情の問題であるかを盛り込む、しかしそれは過剰な深刻さのなかではなくエンタメとして処理される、これが、これが見たかったんだ……。
エンタメとして処理されるからこそひねくれ読者にも届くんだもの。

あとね平良がほんとにきもいままで、しかもストーカーが高じて流血沙汰まで起こすような犯罪者ファンと結局は同根メンタルであると描かれたのもよかったな。
「そんなやつとはちがう」って言わなかった。そんなやつだからこそ清居は惚れた。
変わらない。「正しくあるべき恋人像」に収まらない。
すごいなー。