真昼の淡い微熱

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失恋ショコラティエ9/水城せとな

うーん!!
いかにも水城さんらしいラストだった!
こう、どことなく消化不良感を残しながらもまとめてきてる、という。
恋愛ものは物語が続くからねえ。死なない限り。(だから死んだ『上海』は綺麗に決着ついた、のか?)


6年前にネームメモ完成って……6年前って『俎上』が完結した頃じゃないですか……。
玄関での口喧嘩応酬好きですね。正直こういう部分は今後誰が描いても窮鼠シリーズを越えらんないだろうと思う。
だとしても物足りなさはあったかなって……。
結局えれなは「全部話す」って優しさを与える人なんだもんな。
『同棲愛』にすら及ばないんでは、と。
要は互いの削りあいが見たい!!
それができないのはヘテロものの限界でしょうか悲しいです。水城さんにこそヘテロものの壁を壊してほしいんですが。

あとトークイベントで「猫でしたねえ~」って話があったのでオリヴィエのアレルギーがなんかの伏線かと思ったら違ったので残念。



さて。
なんだこりゃって思いつつ、それがかなり自覚的に描かれてることは明白で、爽太に対して言いたいことは全部薫子さんとえれなが言ってくれたから、まあ、なんともはや。
「責任取らずに済んでヒーロー願望&性欲が満たされて気持ちよかった♡」
最っ高!w
「守る」の独善エゴイズムをきっちり文章化して暴いてくれるのは私が見た中では水城さんだけだ。
脳内ポイズンベリー』の「守る……?」「やらかしたのは櫻井いちこなんだけど」然り。

あ、不倫に「罰」が下らなかったことに特に不満はない。
だって水城さん勧善懲悪しないもん。
恋愛ってそんなもんよね、人間って惨めだよね、人生って上手いこと調整されないよね、って語るから好き。
ただだからその代わりまつりが罰されたんだろう。結婚式が良い象徴。笑っちゃった。

一番腑に落ちないのはさーサエコさん。
上手く立ち回ってるようで結局結婚後の価値観は学んでいなかったからこういうことになっちゃったんだ、っていう。
救われないよな。
男に愛されるための処世術は完璧だから、きっと前時代だったら「夫婦ってそういうもんだ」って受け入れていられたんじゃないかな。
でも母親と違って自己主張できる現代の環境で育ってしまったがために。
その上で「自分が「こうしたい!」って思ったことはとことんやりたいんだ」って笑えるのが救われない。
しかしたまき展開もありうると思ったけど本当に妊娠してたんだな。
しょ、正直娘だったら毒親になりそうで怖い。自分で成し得なかったものを娘に託そうとする系の。
「友達」「元カレ」「セフレ」「夫婦」、そして「恋愛」。
言葉とロールモデルに縛られる人たちの話、だったなあ……。
そうしてから最後に「妊娠したから」って腹くくるのがわりと絶望。
正面切って戦うのは熱かったけどな。


薫子さんすっげー変化。余裕を!持ててる!
爽太叱責の際えれなの呼称くるくる変わるのが見物。
もう心の中ですら「モデルちゃん」なんだな……微笑ましい。
この変化はほとんどサエコさんによるものなんですよ恐ろしい。だから百合って言ったのだ。次は薫子さんと不倫しようぜサエコ!!

サエコさんいなくてもクリエイティブ魂切れない爽太プロ。
「失恋しつづけている」から?
いや元々の資質が高かったのはそうで、単にサエコさんに執着していたかっただけなのはわかるけど。
でも、本当に関わり絶ったのは意外だ。
このへんの考察は追々しよう……今はとりあえず感想だけで手一杯だ。
次回作……よりも……『黒薔薇アリス』の続きを……無理、でしょうね。。。