真昼の淡い微熱

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マンガ・特撮ヒーローの倫理学/諫山陽太郎

★<この世の倫理>とは
因果論の輪廻から<師>や<友>の助けを得て修行し<善>となって解脱すること。

★<あの世の倫理>とは
異世界(死の世界)からの使者によって真善美が黄金比を持ってこの世界の倫理が活性化すること。
真と善とが美によって繋がれることで完成する
異世界は倫理的価値観をもたらす

★真善美とは
真=知る者。真理を知る者。
善=作中における倫理を実行する者。よいこと。
美=美しさ

★<倫理>は全体性を要求する。
<この世の倫理>は異世界を未来に設定し、未来へ向かっていくことで現在を生き生きと描く。
しかし倫理を完成させるために「物語」は死を要求する。
死を挿入することで未来から過去へと<倫理>を引きずりおろし、<今>が未来へ向かうのではなく過去から<今>を問うようになる。
<この世の倫理>→死→<あの世の倫理>。


貴種流離譚とは
<この世の倫理>と<あの世の倫理>を繋ぐことで物語的<倫理>の全体構造を完成させる装置

★諫山陽太郎的(折口信夫から見た)貴種流離譚の要素
(引用開始)
1故郷から離れる
2水辺で協力者に助けられる
3故郷の外での辛苦の末に偉大な存在へと化ける

A主人公は父親を越えた能力を持つが、その父子関係にはどこか尋常でない部分がある。
B母親との接触がない

(p136,137より一部引用)


★日本的物語倫理の構造
死が<この世の倫理>と<あの世の倫理>を繋ぎ、異世界のありかを未来から過去に転化することで主人公が貴種(よそ者)となる。
そうして主人公は善の体現者へと成長し、物語は死によって発生した真善美を獲得する。

未来へ向かう<この世の倫理>から死を通じて流離することで<あの世の倫理>へ変化し、善を体現するよそ者となった主人公は異世界(今ここではない所)へと帰ることで神となる。


★メモ
<身内>と<他者>の線引きが揺らぎ境界が崩れたときにこそ<身内(国)>に危機がおとずれる
日本では<死者>が今を作り国が今に受け継がれてきた。
<死者>は<他者>でも<身内>でもない境界の存在






物語構造の話が面白かったのでメモる。
色んな名作に当てはめていくのが楽しいだろう。視点がひとつ増えた。
そしてまさにももクロの物語性を説明しきってくれてこれはすごい。

紅白という未来(異世界)を設定し、それに向かって邁進していくことで売れていき、いつかそれが叶うのではないかと夢見た矢先あかりんが脱退する(死)。
ここで倫理が未来から過去へと引きずりおろされ、「ここで減速してしまったらあかりんに申し訳ない、あかりんに心配かけないよう成長しなければ」という意識が働くことでメンバーは善を体現する。
運営陣という真(運営方針、メンバーの理解者)、本人らの容姿という美を備え真善美が形を成し、ももクロは成功していく。

……というふうに理解するとわかりやすいな、私の中で。
杏果を「よそ者」として倫理が活性化する話としても切り取れる。

てかファフナーもろ貴種流離譚になりそうだなEXODUS。神話か。
色々援用できそうで物語をもっと楽しめるようになりますね。