真昼の淡い微熱

感想ブログ

ファイアパンチ1~4巻/藤本タツキ

え……まって……すごい……すごい面白い……………………

1話が話題になって面白くて出落ちかと思いきや本物だったっていう……。


エロスとタナトスと宗教倫理そして文明。
どこか進撃に似ているけれども決定的な違いはエロスとタナトスだ。進撃は未分化だがこちらは性のにおいがすごい。しかもいやらしいわけではなく。

途中で突然同性カップルが現れて「僕らも常識から逃れてきた」とか言い出したので、「え……うん、作中倫理を疑い揺るがすのに手っ取り早く"使える"のが同性愛だったのかな?まあ現代的だな?」と思ったんですが、ちがう、それだけの意味じゃなかった、それだけの意味じゃないことに泣いた……。
根幹はエロスとタナトスだ。性という生と死だ。

生き延びるための食人、世代を継ぐための若い兄妹姦(未遂)、それらを忌避する倫理観とそうもいってられない切羽詰まった世界、葬式という儀式、「死んではならない」「生きて」という宗教観、生の苦痛から死へ向かう衝動と死に抗う動機づけ。
1話に全部詰まってる。

セックスがある。強姦が日常的に行われている。子供を産ませることが正義だと正当づけられて。下品なトガタ。
愛がない。性と愛が結びつけられていない。ただ強者の快楽と子をつくるためのセックスがある。
そして4巻ラストだ。
次世代につなぐ大局的アポトーシス!!!

急に飛ぶんじゃないのだ。セックスから急に死へ飛ぶんじゃない。
不死身の肉体再生。
「年よりよりも若い者を守る」。
兄妹姦の倫理。
同性愛と常識。
生があまりに過酷ゆえ子を残すことに懐疑がうまれる。
死にたい。
負けたくない。
トガタの性別の謎。
すべて次世代につなぐための力点をセックスに置かないための。

そしてそのためにセックスがある。タナトスへ向かうために。アポトーシスが現実味を帯びるために。

なんか感動して泣いてた……。




読みながら感情が同期してしまって、そして現実を投影してしまって、そうだよこの世はディストピアだよと思って、私がタナトスを感じて、安寧のための死を想って、いた。しんどい。
そしたらさあーー、、この世界に、負けたくなかった。
この世界に負けたくなかった。
泣き崩れるわ!!

そうして正義が生まれる。掘り下げばっちりだな……。


死のために宗教がある。神が要る。
宗教、倫理ときてスターウォーズの新作のための破壊!!!文明!!!!文明だ!!!!
映画!漫画でメタやって読者を現実に引き戻してリアリズムやって地球を捨てた人類SFそしてスターウォーズにつなぐ!
はあああ……



しかし近親相姦に同性愛にクローンに、そこから見いだされる生命とつながる命と生命倫理、って、やっと時代が90年代の少女漫画に追いついたかなって感じ。
破壊と再生だよ。まんま少女漫画じゃん。そしてその先だ。
あー少女漫画と少年漫画が混ざってくれるの嬉しいなほんと。