真昼の淡い微熱

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マギ~8巻/大高忍

政治描写が面白そうと聞きつけ手に取りました。
中東アジアか……。
王制→下からの民主化(下から……?? 上からとも言えるか、アリババが王族じゃなかったら成立しないし)への流れは順当、王道。
でも共和制って単語が出てきたり、ていうかアリババが自分で考え出したわけじゃなくて勉強した上で他国から共和制の考えを転用しようとしたり芸が細かいよ!
説得力を持たせるのに必然的な選択なのが小憎い、萌えだよ。

ここからだなー!
少年漫画的に民主主義を描いてアリババが「君たちはもう国を作っていける力がある」と演説するのは熱かった。
王族でありスラム出身であり兵士であり市民でありダンジョン攻略者で能力者であり政治家でありアリババくんひとりで色々役目負いすぎだろ。笑

1巻の最初から「元々ここはダンジョンを拠点に栄えた町だ」って紹介される、リアリティーラインの線引きが上手い。
だから政治経済的な話が現実味をもって響いてくる。ある程度単純化してるけど結構複雑なことやってるよね。
他国の紙幣が鍵になるって完全にそれを盛り込もうと思わなきゃできない要素だ。

その最初の説明で、「おっこれは攻略されたら町が衰退するフラグか?」と思ったらとりあえずそうではなく。
あとで気づいたけど兌換紙幣発行って基本的に世界は金本位制なのかー?!
ダンジョン攻略されるたび豊かな金が発掘されそれを町で使えば完全に潤う、世界豊かになる、すげえ。
「かね」が「かね」として描写される。


あとね、"運命"が絶対的で従うべきもの、命が全へと回帰するものっていう思想をここで見れるとは思わずもうけもの。
少年漫画らしからぬ、と言うには私は少年漫画に詳しいわけじゃないけど、物語が肯定するのが運命への投身で主人公側が倒すべきが「運命への反抗分子」って構造めっちゃ面白い。
それでいてカシムによって「運命」を懐疑する、抜かりねえー! いいね私はぬかりなさが大好きだよ。
回帰すべき「全」とはブラフマンがモデルなのかな? いやまあ大分違うんだけどwiki見たらアラビアンナイトってインド思想が色濃いらしいな。
運命の描き方は完全に東洋的でそこに少年漫画性をまぶしてるのわくわくするので頑張って最新刊まで追い付こう。

しかしバトル要素(肉弾戦)は基本的にあんま興味ないんですよね……困った。