真昼の淡い微熱

感想ブログ

Avalon Alter~karma~

う~ん。
アンソロとして『Avalon~bitter~』がわりと好みだったのでkarmaも。
まあ「わりと好み」だなあ、と。


あんまり露悪っぽいのは好きじゃないので最初の『あやつなぎ』は微妙。
後ろ暗い系はとことんやってほしいんだよな。

けど次の『氷の部屋』はそれなりに新鮮でよかった。
いや胸糞悪い女だが……こういう話が特別好きかっていったらそうではないんだが百合のジャンルにこういうのがあってくれたらうれしいという意味で。
描き方がくずしろさん的暗い恍惚ではなく(あの露悪はいっそ好きだが)淡々と人間の感情を掘り下げているので。
人殺しの理由も、小物感がよく出ている。



あとは『ラストピースの行方』が好き!絵もうまいし。
感情というピースはどこかへいってしまった……。
人間とアンドロイド、自分の都合でしたことが相手にとってとんでもない苦痛になる。
自我の拡張が他者によって否定された。

そういえば、最近は自我の膨張的百合見かけなくなってきたな。と思ったけどそれこそ『あやつなぎ』的な後ろ暗い百合に吸収されてるのかな。
自他の境目がなくなって、相手が自分の、もしくは自分が相手のぜんぶになる。
あーでも「相手のリップがかわいいから同じもの使いたくなる!」みたいな描写は見なくなったなあ。よかった。リップやら化粧品やらシャーペンやら小物やら、"女の子アイテム"を自他曖昧化の象徴にするの好きじゃなかったから。
せっかく"百合"なのだから"女の子"を強調しなければならない──みたいな圧力が減っているのかも。(まあ最近の百合アンソロタイトルはかわいいふわふわ洋菓子が多いし、このシリーズも表紙の統一テーマがコスメなわけですが)

自我の膨張が否定される話が好きなんだよな。「同じになりたいが、なれない」悲哀から始まるのが。それこそを百合でやってほしいから『ラストピースの行方』はよかった。



あと『明けない夜』ですが好きな女の子が他の女を好きで失恋する百合も定番化したよなあ。
まあその三角関係に男入れると面倒事が生じるからな──っていう回避型と、「失恋する理由を女だからにしたくない」っていう思想型があると思う。けど失恋百合は描きたいんだね。

でも『かげろうのはな』は唯一古くない!?
いやすごく絵が綺麗だしめっちゃ資料集めしたんだろうなあということがわかるだけに、価値観の古さが……。いやまあ古い価値観を描くための古い時代設定なのだからもうそれははあやりたいんですか、と言うしかないのだが……。
それにしても
将来男が待ち受けている/吉原の太夫/女同士カップ
イコール
火事/心中
はさすがに古い。80年代か?
ここまでやる「百合と男」、最近見ないので逆に新鮮ではあった……。
まあそれでも炎の中で男を毅然と拒絶し殺す点が現代的かな。いや死んだら台無しだが……。