真昼の淡い微熱

感想ブログ

ラブセメタリー/木原音瀬

墓場か。

書きぶりは心配してなかった、なにしろ木原さんなので。
ただ一点敬遠してた理由は「小児性加害」の原因が「小児性愛」と誤認させる作りになっていそうだったから。

実際の小児性加害は嗜好の問題として扱うより犯罪機会論として扱うことを遥かに重視すべき問題である。
大人は子どもを容易に支配できる。
社会を知らない体も弱い知識もない子どもを丸め込むのは簡単だ。
上乗せで保護者や教師など上下関係を築きやすい。

多くの加害者は小児性愛者ではない。
なのにそうだと誤認させるのでは。という不安。


……しかし凪良ゆう『流浪の月』を読んでしまってそんな不安吹き飛んだんだわ悪い意味で。
なにしろ小児性愛どころか小児性加害を肯定しかねない最悪小説だったから!!!

この最悪な美化を一刻も早く最悪の露悪で上塗りせねばならなかった。
木原さんなら、木原さんなら最悪を最悪と言ってくれるから……!
小児性加害者のずるさも卑怯さも罪悪感のなさも空洞さも身勝手さも他責さも誤魔化さずに描いてくれるから!

…………期待通り。

どうやって犯罪を合理化するか人間心理の機微がまんまなんよ。
「どうせ他の誰かが買ってくんだから自分がやっても大差ない」とか。
自分が告発される可能性を芽生えさせて初めて怖気づくとか。
悪ガキの、あの恐怖をもはや誰もわかってくれない追い詰め方……。

参考文献並べたり「性嗜好」と言ったり『流浪の月』とは対照的。
凪良さんが結果的にやってるのは「同性愛と小児性愛の近似性」なんだけど木原さんが意図的にやってるのは「同性愛と小児性愛は近いように見えるけどどのように異なるのか」という模索。
絶対本屋大賞ならんわこれは。
いやなんかほんと清々しいほど最悪すぎてなんかね。

なんか町屋が脱がされたの木原BLならまあそうねなんだけどBLじゃないから脱がされ損でかわいそう。