真昼の淡い微熱

感想ブログ

Wolf Walker

めちゃめちゃめちゃ面白かった!!!
日本版BD出たら絶対買う。

最近心からドキドキワクワクできる作品に出会えてなくてねー。
飢えた心を満たしてくれた。
なんというか、この水準のエンタメが毎日見れる贅沢がしたい、と思う作品といえばいいのか。

もう全然王道なんだけど「えっどうなっちゃうの!?」の連続で飽きさせない。
伏線が卒ない(ほどスタイリッシュな)作品、普段の好みと外れるのだが、気にならないほど面白かったのか私が卒なさに慣れたのか。
メーヴの魂が人間体に戻っていくのを見て「なるほどな……?」と思ってから、本番始まってから駆け抜けてゆく「なるほどな!?」感が気持ちいい。

理想の観客なので、フィクションのお約束とわかっていても序盤の狼には食われやしないかと怖かったしロビンが打ち解けていってからは狼が撃たれやしないかと怖かった。
理想の観客なので(?)お約束とわかっていても序盤は父親に共感しロビンを森に出したくなかったし終盤は怒れるメーヴが閉じ込められてほしくなかった。ロビンの物悲しさよ。

お父さん、狼への恐怖と護国卿への恐怖を重ねてる無駄のなさ。
「怖いんだ」、「ここも牢獄だ」、「約束」あたりはやるべきことをやっている、という印象で、胸に響くものがあるわけではないが、やるべきことをきっちりやれるのは骨組みの強さ。
私もロビンなるものを安全な場所に閉じ込めたい恐怖がある。安全な場所などどこにもない。
ロビンで描かれるガールズパワーを私は持ち合わせていないし、こういう主人公は普段あまり得意ではない。なんだろ、いい服だとは思うが自分には着心地よくないというか。

ただまあ慣れてきたのもあるし、やっぱ「面白い」がすべてを凌駕するかなあ。

まずウルフウォーカーのテーマが好きだな……と思ったら町の祭りの音楽が最高すぎたしロビンとメーヴが森で遊ぶシーンの挿入歌がめっ……ちゃよかった……。
ケルト音楽好きですね……。

護国卿がただ巨悪なだけじゃなくて地位の不確かだから権威づけたい不安症な男であるのが現代ですね。
最期、なぜ下っ端に任せず自ら危険を犯してまで狼と戦うのか、語られなくともわかる。しかしロビンたちにはなんの関係もないのだ。王道の再構築。

理不尽に怯え体制に従順なキャラクターがお父さんじゃなくてお姉ちゃんあたりだったら私好みだったな……。
女の子が依存的な弱さから強さを獲得してゆく姿にしか心揺さぶられないので……でも現代昨品の手の届く範囲そこじゃねえのよ……。

あと親子愛幻想は未だ普遍である。
現代昨品でも万能ではなく、なにを解体しなにを追認するかが問われる。

・マイノリティがマジョリティと拮抗するには魔法の「力」が必要である。
・マイノリティが居場所を奪われ去ることになる。(『マッドマックス怒りのデスロード』以後の世界なのに!)
・そもそもマイノリティが追われ怯えられるのはマジョリティの妄想上の脅威ではなく実際的脅威に因るところである。

父親を捨てず、父親が改心してくれて親子愛で丸く収まるのもつつこうと思えばつつける。
ファミリー映画という制約があるのか?
父親に「約束」を裏切られたロビンでさえメーヴを閉じ込めようとし、その「約束」を反故にする、のだから、好みとしては変わらない父親とそれでも変われるロビンの対比を描くほうがよい。


いやーでも疾走感と感情表現と全体デザインとテーマの語り方とが全部最高だった。
キャラデザは全然好きじゃないけどそれを上回る面白さ。
百合的には仲良くなってくれたのでちょっと見所はあった。(重てえ愛とか依存にしか興味はないが)