真昼の淡い微熱

感想ブログ

違国日記10巻/ヤマシタトモコ

初めてこの漫画が「わたし」を見てくれてびっくりして泣いた。

 
えみりとしょうこ、私とは関係のない「シスターフッド百合」だった。
私はこんなにきれいな恋愛をできない。
 
「…ね もっといっぱい約束して」
 
しかしこういうの弱いんですねっていうかようやく初めてこの漫画が「刺さった」ですね。
約束がほしかった約束しかほしくなかったこの世界でこの社会であなたと生きていっていいってかすかな頼りを求めていた。
 
ふたりはきれいな恋愛をしているので呼応する、約束ができる。
しょうこの「約束」の重たさをえみりは感知しないがえみりは約束を惜しみなく与えることができる。
両想いだから。
いいなあ両想いでいたかったなあ私だけが社会と戦いながらあなたとも戦わなくてはいけないなんて重荷を背負いたくなかったな約束がほしかったよ。

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この漫画への基本感想は「槙生ちゃんが大人として保護者としての権力性に無自覚で、朝は槙生ちゃんの予測可能な範囲を超えないのに槙生ちゃんが朝を尊重していることになっている欺瞞がちくちくと根底に透けてつらい」なんだけど漫画自体はとてもうまいので時折泣く。
 
ノローグが天下一品なの。
直前にモノローグ多発する作風の漫画読んだばかりだからよけい際立つうまさ。
私の中でポエム漫画第一位は不動のベルばらなんだけどなんて言えばいいのか小説でいう地の文が上手い第一位はこれだな。
今回朝のモノローグがリアルタイム言語化ではないことが示されましたけど。
 
色んな立派な大人が朝の周りを囲んでいていいねと社会科の先生をみて思う。
(しかし医学部入試問題が発覚した翌年SDGsは一般的な語でなかった)
だからこそ立派な大人になれていない朝の幼さ、孤独、もろさが見えるのだけど。
 
ヤマシタトモコの会話の空気感めっちゃ好きなんだけどすべての世代・すべての層・すべての関係の会話すべてがあのテンポなので少しノイズ。