真昼の淡い微熱

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エルピス

良作エンタメでした。

1話に1回誰かが泣くドラマだった。ノルマ達成~と思って見てた。
あと、1話で「えー家出少女を匿ってた良い人なのに悪者扱いされる男ファンタジーを肯定するの……? いやこれ殺人はしてないしチェリーさんには手出してないけどロリコン性犯罪者エンドではあってほしい、ファンタジーを強化しかねない描写しないでほしい、私が一番軽蔑してる『流浪の月』ですら「犯罪だと理解しながら未成年匿ったのは逮捕されたかったから」ってエクスキューズ作ってるのに……」と思って願ってたけどもう丸きりそこはスルーでびっくりした。
いや、おじさん、犯罪ではありますからね。



「希望って、人を信じられることなんだね」
この台詞が一番よかった。
何度も潰されて折れてそれでも信じられること。
村井さんの破壊。
ああ私の希望が試されている。

正しいことがしたいなあ、や、執着する「真実」はポストトゥルース時代のものだ。
正しいこと、真なることが揺らいでいる現在だからこそ執着にまでなるのだ。
浅川や岸本がなぜそんなに?という説得力はドラマ内ではなくて今この社会に存在する、「もう飲み込みたくない」。

だからストレートに正しさを問い直すドラマかと思ってたから善玉悪玉の流れで最後「どっちが正義とか言えない」みたいになってたのが謎だった。
浅川と斎藤の手打ちは確かに善玉と悪玉の手打ちだが……。


いや斎藤の魅力とやらがあんまりにもわからなさすぎて重要なこと隠してるのに突っ込めない浅川にびっくりした。
言葉で語らずシグナル察知させる奴一番嫌いだからすべてが「いや聞けよ」でしかなかった……。聞けないものなんだよう、という機微が一切理解できねえ俺ならガン詰めするので……。そんな浅川も多面的な人間ですよ、なのはいいけれど。。

そんなわけで最終話の対決はそこまで主導権を握られて能力的にも惚れた弱み的にも敵わない男と対等に渡り合いたい欲望がすごかった。

いや、最終話どういう落とし所にするんだろう半端な大団円は冷めそうだなと思ったらこのやりあいだったからそこはとてもよかった。
斎藤の「対処すれば多くの被害が及ぶ」に対し浅川の「対処しないことによる多くの被害は無視かよ」もよい。
レイプ事件と引き換えに手打ち、というニヒリズム、結局諦念しか描けないのが悲しいよね。

ただ「レイプ事件を明かしてみろ政権が転覆するぞ!」という脅しに急激に冷めてしまった転覆しなかったやん山口敬之のレイプもみ消しで……。
これもそもそも被害者が自殺する筋書きしてもいいんかよ実在被害者は生きてるというのに。多分公文書書き換え事件と掛けて取り混ぜてるんだろうが……。


村井さんのセクハラパワハラがなんの禊もなしに免罪される、しかも継続したままかつ最終話で「ご愛嬌」になったの最悪だったな。
でもスタジオ破壊はよかった。浅川が泣く、そうして希望が伝播する。
浅川も岸本に対する気軽な暴力まじで引く。百歩譲ってバカ!のことこはよくてもV持参してよくやったビンタはねーだろ。

浅川と岸本の間で繰り返される挫折と一喝の輻輳、展開として単調で一辺倒と思うけど、希望と絶望とはそういうものだろうとも思う。
ずうっと折れずに立っていられるような希望ではない。
人を信じることは難しい。

序盤まだ証拠なかったとき、なんでそんなに冤罪だって確信できるんだ、って思ったけど証拠さえないけれども人を信じる話だったから。

「晴美はそんな子じゃない」
だけどそこには危うさもあり。「パンツを売るような子じゃない」は、いとも簡単に「デリヘルやってた子と一緒だと見られたくない」に変わる。


そういえば「私たちがどれだけ言葉を尽くしても伝わらないことが、井川さんの声で一瞬で伝わるんです」が一番やられたというか、そうだよなあと。
そうだ、偏見も利用した、肩書やノンバーバル情報は「伝わる」。言葉って私が思うよりもずっと伝わらない。

何が面白かったかってわりと裏取りを重ねてくシーンかなあ。
ていうかもろに私たちに希望は紡げるかと問いかけられてますよね……。