真昼の淡い微熱

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ささめきこと/いけだたかし 全9巻

再読。
昔さらっと一気読みして「好みの百合じゃねえ……」とモヤモヤして手放してしまったんだけどkindleセールで買い。

やっぱ好みの百合ではないし、あの頃好みの百合なんてもの自体が全然なくて「私は百合が好きなのに百合は私が好きじゃない……」と苦悩していた懐かしさも思い出すが、「あの頃の百合」の中では抜きんでて誠実だった良作だろうと思う。
朱宮くんの扱いはてんでダメだし恐らく今のいけださんなら絶対描かない容姿ネタ外国人描写等々や2000年代ノリの若さも見えるが、それでも。

ヘテロの女に恋する女の片想い」の憐憫に萌えの比重があった時代に「レズビアンの女に恋する女の片想い」なんて設定で通してくれたことでどれだけ安堵したことか。
そこも懐かしく思い出すよ。
いけださんの反骨心と嗅覚に今も信頼がある。
最終巻なんか、あの頃の作品なら高校生で終わってお茶を濁すか大人になって仲良くやってる数ページで終わるかなのに親にカミングアウトして「今は結婚できないけど いつか――」で終わるんだもんよ。
「普通に恋の話でしょ?」とか。
責任を感じる。

ただいけださんの得意分野は『34歳無職さん』『ふたりはだいたいこんなかんじ』なんだろうな。
片想いから両想いになるオイシイところを全くロマンチックな流れにできてなくて笑ったもん。
ロマンより日常がとことん上手い。稀有な作家性である。
その意味では蓮賀&当麻の日常回も読みたかったかなー。
単話では蒼井さんの仲間ほしい暴走回も好きだったけどまあライブ感も含めてだろうか。

あとロッテファン作者がキャラに「ロッテ」て名づけるの直接的すぎておもしろ。